『資本論』を読む会の報告

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2009年 09月 01日

第158回 9月1日 第3章 第2節 流通手段 c 鋳貨、価値章標

 9月1日(火)に第158回の学習会を行いました。「読む会通信№339」をもとに前回の復習をした後、「第3章 貨幣または商品流通 第2節 流通手段 c 鋳貨、価値章標」の第1段落から第5段落をNMさんの報告をもとに検討しました。報告は最後(第8段落)までされましたが、第6段落以降の議論は次回に行うこととなりました。

 前回の復習の中で「第9段落以降でマルクスは流通手段として機能する貨幣の量(流通必要貨幣量あるいは流通必要金量)について述べているが、流通必要量を超えた場合にはどのように金は流通から引き上げられるのか、足りない場合にはどのように流通に入ってくるのか」という疑問が出されました。そして「そのメカニズムは、金の代表する金量が大きくなったり、小さくなったりすることによると考えられないか」との発言がありました。これに対して「マルクスは流通手段として機能する金量は必要があればなんの問題もなく増減するものとして述べているのではないか。」「金の代表する金量が増減するというのはなんだか奇妙に思える」との発言があり、「マルクスは、第3節 貨幣 a 貨幣蓄蔵 の中で《現実に流通する貨幣量がいつでも流通部面の飽和度に適合しているようにするためには、一国にある金銀量は、現に鋳貨機能を果たしている金銀量よりも大きくなければならない。この条件は、貨幣の蓄蔵貨幣形態によって満たされる。したがって、流通する貨幣の流出流入の水路として同時に役だつのであり、したがって、流通する貨幣がその水路からあふれることはないのである。》と述べている」との紹介がありました。はっきりとした決着はつかず、これからの学習を踏まえて問題を整理し、考えていく課題とすることになりました。

 以下、段落毎にレジュメの内容と議論の報告を掲載します。
●は議論の報告、■は資料、★は報告者によるまとめや意見、問題提起です。

第1部 第3章 貨幣または商品流通
第2節 流通手段 C 鋳貨。価値章標

 
第1段落
・流通手段としての貨幣の機能から、貨幣の鋳貨姿態が生じる。
・価格の度量標準の確定と同じく、造幣の業務は国家に帰属する。
・金および銀が、鋳貨としては身につけるが、世界市場でまた脱ぎ捨てるさまざまな国民的制服には、商品流通の国内的、または国民的部面とその一般的世界市場的部面との分離が現れている。

●《鋳貨姿態》とはどんなものかという疑問が出され、「鋳造された金貨のこと」「英語版ではcoinになっている」との発言がありました。

■英語版では、表題は《 Coin and symbols of value 》となっている。

■流通手段としての貨幣の機能について、大谷禎之介氏は《商品流通の媒介者として、貨幣は流通手段という機能を受け取る。流通手段としての貨幣は、商品流通のなかで、たえず流通から脱落する商品のあとを埋めながら、商品所持者のあいだを転々と渡っていくことによって、商品生産社会における物質代謝を媒介するのである。》(『図解社会経済学』100頁)と述べている。

■鋳貨とその流通について、大谷禎之介氏は《流通手段としての金は、もともとは、売買のたびに、その純度が確かめられ、その重量が計量された秤量貨幣(ひょうりょうかへい)であった。しかし、取引のたびに試金や計量を行なうのは煩わしいので、商品流通の発展とともに、次第に、一定の極印(ごくいん)と形状とをもった鋳貨が生まれてくる。鋳貨とは、それがもつ一定の極印と形状とによって、円、ポンド等々という貨幣名で言い表された一定の金量を含んでいることを示す金片である。そして金地金(きんじがね)を鋳貨にする技術的な作業、つまり鋳造は、価格の度量標準の確定と同様に、国家の手によって行なわれるようになり、国家が鋳貨が含む金の品位(ひんい)と量目(りょうめ 重量)とを保証するようになる。》(『図解社会経済学』101頁)と述べている。

■ 【極印】ごくいん (大辞林 第二版より)
(1)江戸時代、品質証明あるいは偽造防止・盗難防止のため、品物や金銀貨に押した文字や印形。
(2)永久に残るしるし。いつまでも消えない証拠。刻印。

■【品位】ひんい(大辞林 第二版より)
(1)見る人が自然に尊敬したくなるような気高さ、おごそかさ。品。
「―が身にそなわる」「―に欠ける」
(2)金銀の地金や金貨銀貨の中に含まれる金・銀の割合。
「金貨の―が落ちる」
(3)鉱石中の金属の割合。
「―の高い鉱石」

■【量目】りょうめ (大辞林 第二版より)
量った品物の目方。はかりめ。りょうもく。
「―が不足だ」

●《金銀が鋳貨として身につけ世界市場では再び脱ぎ捨てるいろいろな国家的制服》とは何のことかという疑問が出され、「1ポンド金貨」とか「1円金貨」といった国によって違う貨幣単位のことだろうという結論になりました。世界市場では、鋳貨という制服を脱ぎ捨てて金地金の形態で貨幣として機能する。

●《商品流通の国内的、または国民的部面とその一般的世界市場的部面》とはどういうことかとの疑問が出され、「国内市場と外国との取引(貿易)のことだ」という結論になりました。

第2段落
・従って、金鋳貨と金地金とは、もともとただ外形によって区別されるだけであり、金は一方の形態から他方の形態に絶えず転化することができる。
・通流しているうちに、金鋳貨は、あるものよりは多く、あるものよりは少なく、摩滅する。
・同名の金鋳貨でも、重量が異なるために、価値が等しくなくなる。
・したがってまた、諸商品―金がこれらの商品の価格を実現するのであるが―の現実的等価物であることをやめる。
・この混乱の歴史が、中世および18世紀までの近代の鋳貨史をなしている。鋳貨の金存在を金仮象に転化させる、流通過程の自然発生的傾向は、一つの金貨を通用不能にする―すなわち廃貨扱いとする―金属目減りの程度にかんする最近の法律によって認められてさえいる。

★《現実的等価物であることをやめる》とは、20エレのリンネルの価格が、1円(金0.75グラム)であるとして、摩滅した1円金貨であれば金0.73グラムでしかない。この摩滅した1円金貨は、20エレのリンネルのリンネルの現実的等価物(金0.75グラム)ではなくなるということだろう。

●《一つの金貨を…廃貨扱いとする》とはどういうことかとの疑問が出され、「一つの貨幣と訳しているが、ここでの一つのはおかしい」「マルクスコレクション版では貨幣の資格を剥奪されると訳されている」「廃貨とは貨幣の機能を奪うことだ」との発言がありました。

■長谷部訳では、日本語にせずdemonetisierenと記している。

第3段落
・貨幣通流そのものが、鋳貨の実質純分を名目純分から分離し、その金属定在をその機能的定在から分離するとすれば、鋳貨機能においては、金属貨幣に代わって、他の材料からなる標章または象徴が登場する可能性を、貨幣通流は潜在的に含んでいる。
・金または銀のきわめて微少な重量部分を鋳造することの技術的障害と、もともと、より高級な金属の代わりにより低級な金属が価値尺度をつとめており、それゆえ、それらの金属がより高級な金属によって廃位されるときまでは、貨幣として流通しているという事情とが、銀製や銅製の標章が金鋳貨の代替物として果たす役割を歴史的に説明する。
・それらが金にとってかわるのは、鋳貨がきわめて急速に流通し、それゆえきわめて急速に摩滅する領域、すなわち、販売と購買がきわめて小さな規模で絶え間なく繰り返される領域である。
・これらの衛星が金そのものの地位に定着するのをさまたげるために、支払いにさいして金の代わりにこれらの衛星だけを受け取らなければならない割合が、法律で非常に低く規定されている。
・金は絶えず小売流通に入っていくが、補助鋳貨と替えられて、同じように絶えずそこから投げ出される。

★《これらの衛星》とは銀製や銅製の章標のことだろう。衛星は惑星の周りを公転している天体のことだが、金を中心に(従属的に)その周りを回っているといった感じを表現している。
●《衛星が金そのものの地位に定着するのをさまたげるために》とはどういう意味かとの疑問が出され、「補助鋳貨が小口取引の分野でのみ使われるようにするということではないか。日本では、同じ種類の硬貨は20枚以内であれば受けとる義務があるが、21枚以上なら受け取りを拒否できる。つまり、通用力に限界がある」との発言がありました。

■《銀貨や銅貨が流通することのできるのも、すでに見たように、流通手段としての貨幣の価値としての自立的定在が一時的・瞬過的なものであって、その機能を果たすのは貨幣の単に象徴的存在でも十分だ、ということにもとづいているのである。しかし、銀貨や銅貨が無制限に流通にはいり、しかも小規模流通部面を越えて高額取引の部面にまで侵入するようになれば、金鋳貨ないし金地金は姿を消して、取引はもっぱら銀・銅貨によって行なわれるようになり、それらが金の独占的な地位を奪い取る可能性があるので、法律で、それらの鋳貨によって支払われる場合に一回の支払いで受け取らなければならない貨幣額をきわめて低く限定することが行なわれる。たとえば、わが国の貨幣法では、銀貨は10円まで、ニッケル貨は5円まで、青銅貨は1円までが〈法貨〉として通用するものとしていた。つまり、受け手は、これらの額を超える金額については、これらの鋳貨を受け取ることを拒否して、金貨での支払いを請求することができたのである。このように〈本位貨幣〉以外の鋳貨は、補助的な理由通手段であるから〈補助鋳貨〉と呼ばれるのである。》(大谷禎之介「貨幣の機能」(「経済志林」第61巻第4号)278頁)

第4段落
・銀製または銅製の標章の金属部分は、法律によって任意に規定される。それらは、通流するうちに、金鋳貨よりもいっそう急速に摩滅する。
・金の鋳貨定在は、その価値実体から完全に分離する。こうして、相対的に無価値な物、すなわち紙券が、金の代わりに鋳貨として機能することができるようになる。

●《金の代わりに鋳貨として機能する》と述べているが、ここでの鋳貨の意味が問題になり、長谷部訳では《鋳貨(流通手段)》、マルクスコレクション版では《鋳貨[法定の流通手段]》と訳されていることが紹介され、鋳造された金属貨幣という文字通りの意味ではなく、流通手段ということだろうという結論になりました。

第5段落
・ここで問題となるのは、強制通用力をもつ国家紙幣だけである。←金属流通から発生
・これに対して 信用貨幣は、単純な商品流通の立場からいってわれわれのまだまったく知らない諸関係を想定する。
・本来の紙幣が流通手段としての貨幣の機能から生じるとすれば、
信用貨幣は、支払手段としての貨幣の機能に、その自然発生的な根源をもっている。

●「国家紙幣と信用貨幣との違いというのは何か、まだまったく知らない諸関係とは何か」という疑問が出されました。

●《単純な商品流通の立場》とは何かが問題になり、「現金取引ということではないか」との発言がありました。

★信用貨幣として銀行券を念頭に置いているとすれば、利子生み資本が問題になるが、ここではまだ資本さえも登場していない。

■ 紙幣 しへい
紙を素材とする貨幣をいい,金属貨幣に対する。狭義には政府紙幣のみをさすが,広義には銀行券も含む。両者は本来異質のものであるが,1930年代に世界的に銀行券が兌換(だかん)を停止され不換紙幣となって以来,その性格は政府紙幣に近くなった。政府紙幣は国家により強制通用力を与えられて流通し,流通必要量以上に発行されると価値を減じ,インフレーションを招く。最古の紙幣は中国で現れたとされる。日本では江戸時代の藩札などを先駆とし,維新後に財政収入の不足を補うため太政官(だじょうかん)札,大蔵省兌換(だかん)証券,民部省札などの政府紙幣が相次いで発行され,インフレを招いた。紙幣整理事業ののち1885年日本銀行兌換券が発行されたが,1931年兌換停止。政府紙幣は1899年通用廃止とされ,両大戦の際発行された小額紙幣も1953年廃止。現在は日本銀行券のみが流通している。(マイペディア)

■ 政府紙幣 せいふしへい
政府によって法貨として規定され,強制通用力を与えられた紙幣。政府が財政支出をまかなうために払い出すことによって流通に入り込み,一般に不換紙幣である。銀行券と違い,生産物の生産に直接見合うものではなく,自動的に回収されないのでインフレーションの発生と結びつくことが多い。(マイペディア)

■ 信用貨幣 しんようかへい
信用を基礎にして流通する貨幣(厳密には貨幣代用物)。基本的には支払手段としての貨幣機能から生じたもので,最初に商業信用に基づいて商業手形が信用貨幣になったが,銀行信用の発展に伴い,これを基礎にして流通する銀行券が現代の代表的な信用貨幣になっている。当座預金による預金貨幣はその発展した形態。 (マイペディア)

■手形 てがた
一定の金額の支払を目的とする有価証券。約束手形と為替手形の2形式がある。手形は金銭債権を表すもので,権利は証券と密接に結合しており,権利の発生,移転,行使のすべてが証券により行われる。金銭の支払,信用供与,送金または取立て等の機能を果たす。手形の法律的性格として,(1)有価証券,(2)要式証券(法律で定めた方式によって作成しなければならない),(3)設権証券(手形の振出しに見合う取引がなくても証券が交付されれば権利が発生する),(4)指図証券,(5)無因証券(発行の原因にかかわりなく,それ自体有効なものとされる),(6)文言証券(記載文句以外の効力はない),(7)呈示証券(権利の行使は,現物を呈示することが要件となる),(8)受戻証券(金銭を支払う際に,手形と引換えでなければ債務の弁済にはならない)が挙げられる。

■商業手形 しょうぎょうてがた
商取引の代金決済のため振り出された手形。その支払が確実で,期間も普通は短く,手形割引によって銀行から融資を受ける対象となる。融通手形と対比して真正手形ともいう。

■小切手 こぎって
振出人が銀行に一定金額の支払を委託する形式で振り出した有価証券。前提として銀行と当座預金の契約を結び,預金を小切手により処分することを約す。手形と異なりすべて一覧払証券であり呈示があれば直ちに支払う必要がある。現金に代わる支払手段として広く利用される。持参人払式小切手と記名式小切手とがある。

■銀行券 ぎんこうけん
銀行が発行する紙券通貨で,近世に入りロンドンの金匠が金貨等の預り証として発行した金匠手形(ゴールドスミス・ノート),さらに産業革命時に各々の銀行が発行した約束手形が流通範囲を広げ,発展したものである。19世紀半ばころから各国とも中央銀行が発券を独占。政府紙幣と異なる点は,第1にその本質が信用貨幣である点,第2にその国の経済の内在的需要によって発行されるので,返済の形で銀行に還流し,悪性インフレを招かないということである。中央銀行券は当初,金本位制度のもとで金と兌換(だかん)されるものであったが,管理通貨制度の採用後は不換紙幣となった。
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by shihonron | 2009-09-01 23:30 | 学習会の報告


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