『資本論』を読む会の報告

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2010年 02月 09日

第176回 2月9日 第5章 第2節 価値増殖過程

2月9日(火)に第176回の学習会を行いました。
 「第5章第2節 価値増殖過程」の第23段落から最後(第33段落)までをレジュメにもとづく報告を受けて検討しました。
 第23段落の「労働力の価値と労働力の価値増殖とは二つの違う量なのである」という表現について「労働力の価値増殖という表現は分かりにくいが、その意味は労働力の支出によって形成される価値ということだろう」との発言がありました。
 第26段落の「 資本家は貨幣を新たな生産物の素材形成者または労働過程の諸要因として役だつ諸商品に転化させることによって、すなわち諸商品の死んでいる対象性に生きている労働力を合体することによって,価値を,すなわちすでに対象化されて死んでいる過去の労働を,資本に,すなわち自分自身を増殖する価値に転化させる」という箇所について議論がありました。「生産物の素材形成者・労働過程の諸要因として役だつ諸商品」とは、原材料や機械などの生産手段と労働力のことであることについては理解は一致しました。問題は、「諸商品の死んでいる対象性」をどう理解するかでした。ひとつの意見は「死んでいるという表現を用いているのだからそれは生産手段のことだ」というもの、もうひとつの意見は「労働力商品の価値は労働力の生産のために必要な生活手段の価値であり、労働力の価値も、ある与えられた固定された量であり、労働力も死んでいる対象性に含まれる」というものでした。また、「価値を,すなわちすでに対象化されて死んでいる過去の労働を,資本に,すなわち自分自身を増殖する価値に転化させる」の「価値」についても、どう理解するかで議論がありました。ひとつの意見は「ここでの価値は、すでに対象化され死んでいる過去の労働のことなのだから、生産手段のことではないか」というもの、もうひとつは「ここでの価値は貨幣のことを指している、例でいえば27シリングのことではないか」というものでした。
 また、32段落の「労働力の価値がより高いならば,それはまたより高度な労働として発現し,したがってまた同じ時間内に比較的より高い価値に対象化される」について、「労働力の価値が2倍の場合には、その高級な労働力は同じ時間に2倍の価値を形成するといえるのだろうか」との疑問が出されました。

以下は当日配布されたレジュメです。

 第三篇 絶対的剰余価値の生産
  第五章 労働過程と価値増殖過程
   第二節 価値増殖過程          

23 労働力の日価値と,労働過程での労働力の価値増殖とは,二つの違う量
・労働力の日価値は3s.だった(労働力そのものに半労働日が対象化されている)=労働力の交換価値
・労働力がすることのできる生きている労働=労働力の使用価値をなしている。
労働者を24時間生かしておくために半労働日が必要だということは,けっして彼がまる一日労働するということを妨げはしない。だから,労働力の価値と,労働過程での労働力の価値増殖とは,二つの違う量なのである。この価値差は,資本家が労働力を買ったときにすでに彼の眼中にあったのである。

・糸や長靴をつくるという労働力の有用な性質は,一つの不可欠な条件ではあったが,それは,ただ,価値を形成するためには労働は有用な形態で支出されなければならないからである。
決定的なのは,この商品の独自な使用価値(それ自身がもっているよりも大きな価値の源泉だという独自な使用価値)だった。これこそ,資本家がこの商品に期待する独自な役だちなのである。・その場合彼は商品交換の永久な法則に従って行動する
    労働力の売り手           貨幣所持者
   使用価値を引き渡す  ---→  労働力の使用価値,一日中の労働は,彼のもの
   労働力の交換価値を実現 ←---  G
・労働力はまる一日活動し労働することができるが,労働力の一日の維持には半働日しかかからないという事情(労働力の使用が一日につくりだす価価が労働力自身の日価値の二倍だという事情)は,買い手にとっての特別な幸運ではあるが,決して売り手に対する不法ではない。

24 手品はついに成功した。貨幣は資本に転化された
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・労働者は6時間だけではなく12時間の労働過程に必要な生産手段を作業場に見いだす。10ポンドの綿花が6労働時間を吸収して10ポンドの糸になったとすれば,20ポンドの綿花は12労働時間を吸収して20ポンドの糸になる。

・5労働日の金表現は30s.であり20ポンドの糸の価格である。1ポンドの糸は相変わらず1s.6d.である。この過程に投入された商品の価値総額は27s.だった。糸の価値は30s.である。生産物の価価は,その生産のために前貸しされた価値よりも1/9だけ大きくなった。27s.は30s.になった。それは3s.の剰余価値を生んだ。手品はついに成功した。貨幣は資本に転化された

25 問題の条件はすべて解決されており,しかも商品交換の法則は少しも侵害されてはいない。
「資本は流通から発生することはできないし,また流通から発生しないわけにもゆかないのである。資本は,流通のなかで発生しなければならないと同時に流通のなかで発生してはならないのである。」s.180

・等価物が等価物と交換された。資本家は,買い手として,どの商品にも,綿花にも紡錘品にも労働力にも価値どおりに支払った。
・次に彼はこれらの商品の使用価値を消費した。労働力の消費過程,それは同時に商品の生産過程でもあって,30s.という価値のある20ポンドの糸という生産物を生みだした。
・資本家は市場に帰ってきて,商品を売る。彼は糸1ポンドを1s.6d.で,つまりその価値よりも1ペニーも高くも安くもなく,売る。
・それでも,彼は,初めに彼が流通に投げ入れたよりも3s.多くそこから引き出す。

・この全経過,彼の貨幣の資本への転化は,流通部面のなかで行なわれ,そしてまた,そこでは行なわれない。流通の媒介によって----というのは,商品市場で労働力を買うことを条件とするから。流通では行なわれない----というのは,流通は生産部面で行なわれる価値増殖過程をただ準備するだけだから。

26 資本家は貨幣を新たな生産物の素材形成者または労働過程の諸要因として役だつ諸商品に転化させることによって,すなわち諸商品の死んでいる対象性に生きている労働力を合体することによって,価値を,すなわちすでに対象化されて死んでいる過去の労働を,資本に,すなわち自分自身を増殖する価値に転化させる。

27 価値形成過程と価値増殖過程
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28 価値形成過程と労働過程
労働過程----使用価値を生産する有用労働。運動はここでは質的に,その特殊な仕方において,目的と内容とによって,考察される。
価値形成過程----問題になるのは,労働がその作業に必要とする時間,すなわち労働力が有用的に支出される継続時間だけ。ここでは,諸商品は,ただ対象化された労働の一定量として数えられるだけ。生産手段に含まれているにせよ労働力によってつけ加えられるにせよ,労働はもはやその時間尺度(何時間とか何日間とか)によって数えられるだけである。

29 価値規定
・労働は,ただ,使用価値の生産に費やされた時間が社会的に必要である限りで数にはいる。
・労働力は正常な諸条件のもとで機能しなければならない。社会的に支配的な労働手段。正常な品質の原料。労働の対象的諸要因の正常な性格は,労働者にではなく資本家に依存している。
・もう一つの条件は,労働力そのものの正常な性格。支配的な平均程度の技能と熟練と敏速さ。普通の平均的な緊張度で,社会的に普通な強度で,支出されなければならない-----資本家の監督。
・最後に-----そしてこの点についてはこの紳士は一つの独自な刑法典をもっているのだが-----原料や労働手段の目的に反した消費が行なわれてはならない。というのは,浪費された材料や労働手段は,対象化された労働の余分に支出された量を表わしており,したがって数にはいらず,価値形成の生産物に加えられないからである。

30 商品の分析(第1章)との関連
・商品の分析から得られた,使用価値をつくるかぎりでの労働と価値をつくるかぎりでの労働との相違が,今では生産過程の違った面の区別として示されているのである。

31 商品生産の資本主義的形態
・労働過程と価値形成過程との統一としては,商品の生産過程。
・労働過程と価値増殖過程との統一としては,資本主義的生産過程であり,商品生産の資本主義的形態である。

32 単純な社会的平均労働であるか,複雑な労働(もっと比重の高い労働)であるかは,価値増殖過程にとってはまったくどうでもよい。
・社会的平均労働に比べてより高度な,より複雑な労働として認められる労働は,単純な労働力に比べてより高い養成費のかかる,その生産により多くの労働時間が費やされる,したがってより高い価値をもつ労働力の発現である。
・労働力の価値がより高いならば,それはまたより高度な労働として発現し,したがってまた同じ時間内に比較的より高い価値に対象化される。
・労働の等級の差異がどうであろうと,労働者がただ彼自身の労働力の価値を補填するだけの労働部分は,彼が剰余価値をつくりだす追加的労働部分から,質的には少しも区別されない。相変わらず剰余価値はただ労働の量的超過だけによって,同じ労働過程の,延長された継続だけによって,出てくる。
 (18) 高度な労働と単純な労働との,「熟練労働」〔"skilled labour"〕と「不熟糠労働」〔"unskilled labour"〕との相違-----幻想,伝統的な慣習。労働者階級中の或る階層のいっそう絶望的な状態----自分の労働力の価値を強要する力が他の階層よりも弱い。偶然的な諸事情-----資本主義的生産の発達している国----一般に,筋力を多く必要とする粗野な労働は,それよりもずっと精密な労働に比べてより高度な労働に逆転し,後者は単純な労働の等級に下落。また他方では,綿びろうど剪毛工〔fustial cutter〕の労働は,多くの肉体的緊張を必要とし,しかも非常に非衛生的であるにもかかわらず,「単純な」労働とされている。とにかく,いわゆる「熟練労働」が国民の労働のなかで量的に大きな範囲を占めているものと想像してはならない。

33 より高度な労働は社会的平均労働に還元される
・たとえば1日の高度な労働はx日の単純な労働に。資本の使用する労働者は単純な社会的平均労働を行なうという仮定によって,よけいな操作が省かれ,分析が簡単にされる。

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・イギリスの基本通貨単位は,日本では通常,「ポンド」と呼ばれますが,「pound sterling(パウンド・スターリング)」または「sterling pound(スターリング・パウンド)」が正確な呼び名です。略号は「£ stg.」。
・1パウンドの1/100が補助通貨単位である「penny(ペニー)」ですが,複数形は「pence(ペンス)」となります。 *1971年以前の L.S.D. 方式通貨-----1 l.= 20 s.= 240 d.

・Pound(パウンド)(記号:£,略号:l.) 記号・略号共に,古代ローマの重量単位「lībra(リーブラ)」の頭文字が由来となっています。
・Shilling(シリング)(記号:/,略号:s.) 古代ローマの金貨「solidus(ソリドゥス)」の頭文字が由来です。
・Penny(ペニー)(略号:d.)略号は,古代ローマの硬貨「denarius(デナリウス)」の頭文字が由来です。

4パウンズ 3シリングズ 2ペンス⇒ £4.3/2   £4 3s. 2d.    4l. 3s. 2d.
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by shihonron | 2010-02-09 23:30 | 学習会の報告


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