2010年 07月 06日
7月6日(火)に第192回の学習会を行いました。 レジュメに基づいた報告を受け、「第20章 労賃の国民的相違」を検討しました。 以下は当日のレジュメです。 第6篇 労賃 第20章 労賃の国民的相違 ()内の数字は段落を示しています。 ・第15章で取り扱った様々な組合せ(労働日の長さ、労働の強度、労働の生産力の組合せ)は労働力の価値の絶対的または相対的(すなわち剰余価値に比べての)大きさの変動を引き起こしうるものだったが、他方、労働力の価格が実現される生活手段の量もまた、この価格の変動からは、独立な、またはそれと違ったいろいろな運動をすることができた。(1) ★「この価格」とは「労働力の価格」のこと。労働力の価格が高くなっても、それによって買うことのできる生活手段の量は、変化しないこともあれば、増大することも、減少することもありえる。 ・労働力の価値または価格を単に労賃という通俗的な形態に翻訳するだけのことによって、かの諸法則はすべて労賃の運動の諸法則に転化するのである。(1) ★「かの諸法則」とは、第15章であきらかにした労働力の価値の絶対的または相対的な変動についての法則のこと。 ・この運動の中で変動する組み合わせとして現れるものは、違った国々については、国民的労賃の同時的相違として現れうるものである。(1) ・だから、諸国民の労賃を比較するにあたっては、労働力の価値の大きさの変動を規定するすべての契機を考慮しなければならないのである。すなわち、自然的な、また歴史的に発達した第一次生活必需品の価格と範囲、労働者の養成費、婦人・児童労働の役割、労働の生産性、労働の外延的および内包的な大きさがそれである。(1) ・まったく表面的な比較のためにも、まず第一に各国における同じ産業の平均日賃金を同じ長さの労働日に還元することが、必要である。このように日賃金を調整してから、さらに時間賃金を出来高賃金に換算しなければならない。なぜならば、労働の生産性についても労働の内包的な大きさについても測度器になるのは出来高賃金だけだからである。(1) ★各国の賃金の比較は、出来高賃金に換算してはじめて可能であるかに述べている。この出来高賃金は、時間賃金を換算したものだという。具体的にはどういうことか? A国の方がB国よりも労働の生産力は高いと仮定する。 A国では、10時間労働日で、12000円の日賃金が支払われる。 この10時間に120個の製品が生産される。 A国の10時間の労働に対する賃金は12000円。(調整した日賃金) A国の製品1個あたりの出来高賃金は100円。 B国では、12時間労働日で、3000円の日賃金が支払われる。 この12時間に50個の製品が生産される。 B国の10時間の労働に対する賃金は2500円。(調整した日賃金) B国の製品1個あたりの出来高賃金は60円。 ・与えられた一国では労働時間の単なる長さによる価値の度量に変更を加えるものは、ただ国民的平均よりも強い強度だけである。個々の国々をその構成部分とする世界市場ではそうではない。労働の中位の強度は国によって違っている。これらの種々の国民的平均は一つの階段をなしており、その度量単位は世界的労働の平均単位である。だから、強度のより大きい国民的労働は、強度のより小さい国民的労働に比べれば、同じ時間により多くの価値を生産するのであって、この価値はより多くの貨幣で表現されるのである。(2) ★ A国の中位の労働強度(国民的平均) 1 B国の中位の労働強度(国民的平均) 2 C国の中位の労働強度(国民的平均) 3 D国の中位の労働強度(国民的平均) 4 E国の中位の労働強度(国民的平均) 5 世界的労働の平均単位=(1+2+3+4+5)÷5=15÷5=3 ・価値法則は、国際的に適用される場合に次のようなことによっても修正される。世界市場では、より生産的な国民的労働も、そのより生産的な国民が自分の商品の販売価格をその価値まで引き下げることを競争によって強制されないかぎり、やはり強度のより大きい国民的労働として数えられるということによって修正される。(3) ★生産性が高く製品1個の生産に1時間の労働が費やされるが、価値どおりの10円ではなく、20円で販売することができれば、製品1個の生産に支出された1時間の労働は、世界的平均労働の2倍の強度の労働として、したがって世界的平均労働の2時間分とみなされる。 ・ある一国で資本主義的生産が発達していれば、それと同じ度合いでそこでは労働の国民的な強度も生産性も国際水準の上に出ている。だから、違った国々で同じ労働時間に生産されるいろいろに違った分量は、不当な国際的価値をもっており、これらの価値は、いろいろに違った価格で、すなわち国際的価値の相違に従って違う貨幣額で表現されるのである。だから、貨幣の相対的価値は、資本主義的生産様式がより高く発達している国民のもとでは、それがあまり発達していない国民のもとでよりも小さいであろう。したがって、名目賃金、すなわち貨幣で表現された労働力の等価も、第一の国民のもとでは第二の国民のもとでよりも高いであろうということになる。といっても、このことが現実の賃金にも、すなわち労働者が自由に処分しうる生活手段にもあてはまる、という意味ではけっしてないのであるが。(4) ★マルクスは、「先進国」について ①労働の国民的な強度が国際水準を超えている、 ②労働の生産性が国際水準を超えている、 ③貨幣の相対的価値は小さい、 ④名目賃金は高い と述べている。 だが、①②だから③④だというのがよくわからない。 ①労働の強度が国際水準を超えているから、同じ時間で生産される生産物の価値は大きくなる。 ②労働の生産性が国際水準を超えているから、同じ時間で生産される生産物の量はより多い。 「先進国」での労働の強度は「未発達な国」の2倍、生産力は10倍だとする。 強度が2倍であれば、同じ時間に2倍の価値を生産する。また、生産性が10倍なら、同じ時間に10倍の生産物(使用価値)を生産する。「先進国」の生産物1個あたりの価値は、「未発達な国」の生産物の価値(100円)の5分の1(20円)ということになる。しかし、それは世界市場で価値以上の価格(80円)で販売されうる。 生産物1個の価値が20円であっても、世界市場では80円で販売されうる。 ③「貨幣の相対的価値は小さい」とは、一定額の貨幣が表している価値が小さいということ、簡単に言えば「物価が高い」ということだろう。「先進国」の生産物は、価値以上に販売されるのだから、物価が高いと言うことだろうか。 物価が高ければ、一定量の生活必需品の価格も高いのだから、名目賃金は高いということか。 ★「先進国では物価が高い」というのは経験的事実であるように思えるが、なぜそうなのかはよくわからない。「先進国」では、労働の生産性は高く、生産物の価値は小さいのだから価格も安くなるのではないのだろうか…。注65では「土地の生産物が安く、また穀物一般が安い貧国では、労働の外観上の価格は他の諸国に比べて低いのが常だとはいえ、じつはたいていの場合に実質的にはより高いのだ」という文章が引用されている。生活必需品の大きな部分を占める食料品価格が「先進国」では高いということか。 ★「名目賃金」=貨幣で表現された労働力の等価 「現実の賃金」=労働者が自由に処分しうる生活手段 ・しかし、違った国での貨幣価値のこのような相対的相違は別としても、しばしば見られるように、日賃金や週賃金などは第一の国民のもとでは第二の国民のもとでよりも高いが、相対的な労働の価格、すなわち剰余価値に比べての労働の価格も、生産物の価値に比べての労働の価格も、第二の国民のもとでのほうが第一の国民のもとでよりも高いのである。(5) ★「先進国」 6000c:1500v:4500m v/m=1/3 v/(c+v+m)=1/8 「途上国」 1000c:1000v:1000m v/m=1 v/(c+v+m)=1/3 ・工場調査委員会の一員の結論――「イギリスでは賃金が大陸よりも、労働者にとっては高いかもしれないが、工場主にとっては事実上安い」(6) ・工場監督官の指摘――大陸の労働は、イギリスの労働に比べて、賃金は低く労働時間はずっと長いにもかかわらず、生産物に対する割合から見ればイギリスの労働より高価だ。(7) ・ドイツにある綿工場のイギリス人支配人は言う「賃金は、イギリスよりもずっと」低くて、多くの場合に50%も低いが、労働者の数は機械設備に対する割合から見ればずっと大きくて、いくつかの部門では5対3の割合になっているという。(7) ・東欧やアジアでの鉄道建設においては、実際上の必要から、労働の強度の国民差を考慮に入れざるをえなかったが、会社の経験が教えるところでは、賃金の高さは多かれ少なかれ中位の労働強度に対応しているが、相対的な(生産物と比べての)労働価格は概して反対に動くのである。(8) ・H・ケアリは、種々の国民的労賃は種々の国民的労働日の生産性の程度に正比例することを示して、この国際的な関係から、労賃は一般的に労働の生産性につれて上がり下がりするという結論を引き出そうとしている。このような結論のばかばかしさは、剰余価値の生産に関するわれわれの分析の全体がそれを証明している。(9) ★労働の生産性の増大は、それが生活必需品の生産に関わるものであれば必要生活手段の価値を低落させ、従って労働力の価値も低落させることを相対的剰余価値の生産のところでわれわれはすでに見た。
by shihonron
| 2010-07-06 23:30
| 学習会の報告
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