『資本論』を読む会の報告

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2011年 06月 28日

第228回 6月28日 第6章 流通費

6月28日(火)に第228回の学習会を行いました。
「第6章 流通費 第2節 保管費」と「第3節 運輸費」についてレジュメに基づく報告を受け検討しました。

以下はレジュメです。


第二節 保管費
①価値の単なる形態変換(観念的に考察された流通)から生ずる流通費は,商品の価値には入らな い。流通費に支出される資本部分は,生産的に支出される資本からの控除をなす。
・これから考察する流通費は,これとは性質が違う。この流通費は生産過程から生じうる。この生 産過程は流通において続行され,その生産的な性格が流通形態によって覆い隠されている。
・それは,社会的に見れば,費用であり,生きている労働なり対象化されている労働なりの不生産的 な支出だと言えるが,個別資本家にとっては価値形成的に作用し,彼の商品の販売価格への付加分 をなしうる。
・このことは,この費用が生産部面が異なれば異なり,ときには同じ生産部面内でも異なる個別資本 によって異なるということからも生じる。この費用は,商品の価格につけ加えられることによっ て,個別資本家の負担になる程度に比例して[平等に]配分される。
・価値をつけ加える労働は,資本主義的基礎の上では常に剰余価値をつけ加える。労働が形成する 剰余価値は資本家が労働に支払う程度によって定まる。
・だから,商品に使用価値をつけ加えることなしに商品の価格を高くする諸費用,したがって社会に とっては生産の空費に属する諸費用が,個別資本家にとっては致富の源泉になることができる。
・他方,この流通費が商品の価格につけ加える付加分がただこの流通費を均等に配分するにすぎな いとしても,流通費の不生産的な性格がそれによってなくなるわけではない。たとえば,保険会社 は個別資本家たちの損害を資本家階級のあいだに配分する。このことは,このように平均化され た損害も社会的総資本について見ればやはり損害であるということを,妨げるものではない。

一 在庫形成一般
①生産物が商品資本として存在しているあいだ,またはそれが市場に留まっている(生産過程と消 費過程との中間)あいだは,生産物は商品在庫を形成する。市場にある商品(在庫の姿にある商 品)としては,商品資本はどの循環でも二度現われる。一度は,過程進行中の資本自身の商品生産 物として,もう一度は,買われて生産資本に転化されるために市場になければならない別の資本の 商品生産物として。後のほうの商品資本は注文によって生産されるということも有り得る。その 場合には,それが生産されるまでは中断が起きる。
・生産・再生産過程の流れは,大量の商品(生産手段) が絶えず市場にある(在庫形成)というこ とを必要とする。同様に,生産資本は労働力の購入を含んでいる。この場合には貨幣形態は,労働 者がその大部分を市場で見いださねばならない生活手段の価値形態でしかない。
・商品資本が在庫を形成している状態は,資本価値の立場に立ってみれば,目的に反する非自発的な 市場滞留。売れ行きが速ければ速いほど,再生産過程は淀みなく流れる。形態転化W'-G'での 滞留は,現実の物質代謝を妨げ,資本がさらに生産資本として機能することを妨げる。
・G-Wにとっては,市場にいつでも商品があるということ,すなわち商品在庫は,再生産過程の流 れの条件として,また新資本または追加資本の投下の条件として,現われる。

②商品資本が商品在庫として市場に滞留することは,建物や倉庫や商品貯蔵所や商品保管所を必要 とし,不変資本の投下を必要とする。商品を貯蔵所に運び込むための労働力への支払も必要であ る。そのうえ,商品は傷むものであり,有害な自然的影響にさらされ。それを防ぐためには,追加 資本が,一部分は対象的形態で労働手段に,一部分は労働力に,投下されなければならない。

③資本が商品資本としての,したがってまた商品在庫としての形態で存在することは,色々な費用の 原因になり,これらの費用は,生産部面で生ずるのではないので,流通費に数えられる。
・この流通費は,ある程度まで商品の価値に入り,商品を高価にする----第一節で述べた流通費と区 別される。商品在庫の維持や保管に役立つ資本と労働力は,直接的生産過程から引きさられる。
・これに充用される資本は,資本の成分としての労働力をも含めて,社会的生産物のうちから補塡さ れねばならない。この資本の投下は労働の生産力の低減と同じように作用するのであり,一定の 有用効果を得るためにより多くの資本と労働が必要になる。それは空費〔Unkosten〕である。

④商品在庫の形成によって必要になる流通費が,ただ既存の価値が商品形態から貨幣形態に転化す るための時間からのみ,つまりただ生産過程の一定の社会的形態からのみ生ずる限りでは----そ れは第一節にあげた流通費とまったく共通な性格をもつ。
・他方,諸商品の価値がここで保存または増殖されるのは,使用価値すなわち生産物そのものが資本 投下の必要な一定の対象的諸条件のもとに移され,また使用価値に追加労働を作用させる諸作業 のもとに置かれるからに他ならない。
・これに反して,商品価値の計算やこの過程に関する簿記や売買取引は,商品価値が宿っている使用 価値には作用しない。それらは,ただ商品価値の形態と関係があるだけ。
・前提された場合には在庫形成(ここでは非自発的) に伴うこれらの空費はただ形態転化の停滞と 必要とから生ずるだけなのに,第一節の空費と区別されるのは,それらの対象そのものが価値の形 態転化ではなく価値の維持(価値は生産物すなわち使用価値としての商品の中に存在し,使用価 値そのものの維持によってのみ維持されうる)だということによる。使用価値は減少するが,そ の減少は制限されて,維持される。前貸しされて商品の価値も,ここでは高められない。しかし, 新たな労働が,対象化されている労働も生きている労働も,つけ加えられる。
⑤さらに研究すべき点----このような空費はどの程度まで商品生産一般の,またその一般的な絶対 的な形態における商品生産すなわち資本主義的商品生産の,独特な性格から生ずるのか。また,こ れらの空費はどの程度まですべての社会的生産に共通であるのか,どの程度まで資本主義的生産 の中で一つの特殊な姿を,一つの特殊な現象形態をとっているだけなのか。

⑥アダム・スミス----在庫形成は資本主義的生産に特有な現象。レーラー----在庫形成は資本主義 的生産の発展につれて減少。シスモンディ----資本主義的生産のくらい面(欠陥。短所)。

⑦在庫は三つの形態で存在。生産資本,個人的消費財源,商品在庫または商品資本。在庫は,一方の 形態で増加すれば,他方の形態では相対的に減少する。といっても,その絶対量から見れば,三つ の形態のすべてで同時に増大することもありうる。

⑧生産が直接に自家需要の充足に向けられていて,比較的小さな部分だけが商品の形態をとってい る場合には,商品在庫は,富のごくわずかな部分しか占めていない。生産物の圧倒的な部分が,生 産手段または生活手段の在庫になっている。それは商品在庫の形態をとらない。このような生産 様式を基礎とする社会には,A・スミスによれば,在庫は存在しないというのである。A・スミス は在庫の形態を在庫そのものと混同している。

⑨生産資本の形態にある在庫----この生産手段はすでに生産過程にあるかまたは少なくとも生産者 の手にある,つまり潜在的にはすでに生産過程にある。
・労働の生産性の発展,したがってまた資本主義的生産様式の発展につれて,労働手段の形で一度に 過程に合体されて繰り返し過程の中で機能する生産手段(建物や機械など) の量は絶えず増大す る。その増大は労働の社会的生産力の発展の前提であるとともにその結果でもある。この形態に ある富の絶対的な,また相対的な増大は,資本主義的生産様式を特徴づける。
・しかし,不変資本の素材的存在形態(生産手段)は,この種の労働手段からだけではなく,非常に 様々な加工段階にある労働材料,また色々な補助材料からもなっている。生産規模の拡大につれ て,また協業や分業や機械などによる労働の生産力の上昇につれて,日々の再生産過程に入る原料 や補助材料などの量も増加する。これらの要素は,生産場所に準備されていなければならない。 だから,このような,生産資本の形態で存在する在庫の量は,絶対的に増大する。過程が淀みなく 流れるためには多くの原料などの集積がいつでも生産場所に準備されていなければならない。
・とはいえ,このような在庫は,絶対的には増加しても,相対的には減少しうる。

⑩供給の確実さや規則正しさや速さが小さいほど,それだけ原料などの在庫は,大きくならざるを得 ない。これらの条件は,資本主義的生産の発展度に反比例し,したがって社会的労働の生産力の発 展度に反比例する。⑪しかし,ここで在庫の減少として現われるものは,一部分は本来の商品在庫 の増加,したがって同じ在庫の形態変換でしかない生産資本の形態での在庫の減少でしかない。 たとえば,毎日の石炭生産の規模とエネルギーとが大きければ,紡績業者は大量の石炭貯蔵を必要 としない。石炭供給の不断の確実な更新がそれを不必要にする。第二に,一つの過程の生産物が 生産手段として別の過程に移って行ける速さは,運輸交通期間の発展に依存する。その場合,運輸 費が安いことは大きな役割を演ずる。この二つの事情は,生産過程そのものから生ずる。
・第三には,信用制度の発達が影響する。紡績業者が自分の綿花や石炭などの更新のために自分の 綿糸の直接的な販売に頼ることが少なければ少ないほど(信用制度が発達するほどこの直接的依 存は少なくなる),綿糸の販売の偶然に依存しない連続的な綿糸生産を与えられた規模で確保す るために必要なこれらの在庫の相対的な大きさは,ますます減少しうる。
・第四に,多くの原料や半製品などはその生産にかなり長い期間が必要(ことに農業)。その間原 料の一定の在庫が存在しなければならない。産業資本家の手の中でこの在庫が減少するとすれば, それは商人の手の中で増加している。運輸機関の発達により,工場主は比較的小さい割合で自分 の綿花在庫を更新しうるが,同じ綿花がそれだけ大量に商品在庫として商人の手にある。これは 在庫の形態変換。社会的資本を見れば,同じ生産物量が在庫の形をとる。一国について言えば,た とえば一年間の必要量のために準備しておかねばならない大きさは,運輸機関の発達につれて減 ってくる。多くの汽船や帆船が米英間を往来するようになれば,イギリスにとっては綿花在庫の 更新の機会が増加し,在庫の量は減少する。世界市場の発展も,同じように作用。同じ物品が別々 の国から別々の時期に少しずつ供給されるから。 

二 本来の商品在庫
①資本主義的生産の基礎の上では商品が生産物の一般的な形態になる。すべての商品は,したがっ てまたすべての商品資本も,市場にある限りでは商品在庫の一要素をなす。それゆえ,商品在庫は 資本主義的生産が進むにつれて増大する。
・これはただ在庫の形態変換でしかない(商品形態にある在庫の増加⇒直接的生産用在庫または 消費用在庫の形態での在庫の減少)。在庫の社会的形態が変わっただけのこと。社会的総生産物 に比べての商品在庫の相対的な大きさが増すだけではなく,同時のその絶対的な大きさも増すと すれば,それは,資本主義的生産とともに総生産物の量が増大する。
②資本主義的生産の発展につれて,生産の規模は個別資本家の資本の大きさや,彼の資本の増殖衝動 や,彼の生産過程の連続と拡大との必要やによって決定される度合いが大きくなる。どの特殊な 生産部門でも,商品として市場にある生産物量は,必然的に増大する。商品在庫は増大する。
③社会の最大の部分が賃金労働者(自分の賃金を毎週受け取って毎日支出する----生活手段を在庫 として見いださなければならない人々)に,転化される。この在庫が絶えず流動を続けられるた めには,それらの要素の一部分は絶えず停滞しなければならない。
④これらの契機は,生産の形態から生じ,生産物が流通過程で通らねばならぬ形態転化から生ずる。
⑤生産物在庫の社会的形態がどうであろうと,その保管には費用が必要----生産物の貯蔵所となる 建物や容器,有害な影響を防ぐため。
・在庫が社会的に集中されるほど,このような費用は相対的に小さくなる。これらの費用は,対象化 された形態か生きている形態かでの社会的労働(資本主義的形態では資本投下),といっても生 産物形成そのものには加わらない,それの一部分をなし,生産物からの控除をなす。
・それは,必要であり,社会的な富の空費である。それは社会的生産物の維持費であって,このこと は,商品在庫の要素としての社会的生産物の存在が単に生産の社会的形態から,すなわち商品形態 やその必然的な形態転化から生ずるにすぎないと否とにかかわりはない。生産物在庫は,あらゆ る社会に共通。
⑥問題になるのは,このような費用はどの程度まで商品の価値に入るのかということ。
⑦資本家は,前貸しした自分の資本を生産物に転化させたが,この商品量が売れないならば,彼の資 本の価値増殖過程が停滞するだけではない。この在庫を維持するために建物や追加労働などの形 で必要になる支出は,積極的な損失になる。
・彼は彼の品物を貨幣に転化させなければならない。品物が商品形態に固定されるための空費は彼 自身が冒す危険であって,この冒険は商品の買い手にはなんのかかわりもない。買い手は彼に彼 の商品の流通期間の代価を支払はしない。
・価値革命が現実に起きているかまたはそれが予想されるような時期に資本家がわざと自分の商品 を市場に出さないでおく場合でも,彼が追加空費を実現するかどうかは,この価値革命が到来する かどうかにかかっており,彼の思惑があたるかはずれるかにかかっている。在庫形成が流通の停 滞である限り,そのために必要になる費用は商品には少しも価値をつけ加えない。
・貨幣準備の形成なしには貨幣は流通することができないように,商品在庫なしには商品流通はあ りえない。資本家は,W'-G'ではこの必然に出会わなくても,G-Wではこれに出会う。彼の商 品資本についてではないが,彼のための生産手段や彼の労働者のための生活手段を生産する他の 資本家たちの商品資本については,この必然に出会う。
⑧在庫形成が自発的であるか否か,商品生産者が意図的に在庫を保持するのか,それとも流通過程の 諸事情により在庫を形成するのかは,事柄の本質を変えることはできないように見える。
・自発的な在庫形成と非自発的な在庫形成との区別は何か。非自発的な在庫形成は,商品生産者の 関知することなしに彼の意志を妨害する流通停滞から生ずる。またはこの停滞と同じである。自 発的な在庫形成を特徴づけるものは何か? 売り手は自分の商品をできるだけ速く売ってしまお うとする。かりに彼がそれを販売することを取りやめるならば,生産物は商品在庫の可能的要素 を形成するだけで,その現実的要素を形成しない。商品そのものは彼にとってはその交換価値の 担い手にすぎず,貨幣形態になった後ではじめて,交換価値として作用しうる。

⑨商品在庫は,所与の期間のあいだ需要の大きさに対して十分であるためには,ある程度の大きさを もたなければならない。そのさい,買い手の範囲が絶えず拡大されることがあてにされる。たと えば,一日のあいだもちこたえるためには,市場にある商品の一部分は,他の部分が流動して貨幣 に転化している間も,たえず商品形態にとどまっていなければならない。商品の停滞は商品の販 売の必然的な条件。その大きさは,中位の売れ行きよりも大きくなければならない。
・他方,在庫は絶えず解消するのだから絶えず更新されなければならない。この更新は結局はただ 生産によって,商品の供給によって,行なわれるより他はない。商品在庫は,この期間中間に合う ものでなければならない。それが元の生産者の手に留まっていないで,卸売商品から小売商人に 至るまでの様々な貯蔵所を通るということは,事柄そのものを変えはしない。社会的に見れば,相 変わらず資本の一部分は商品在庫の形態にある。
・生産者自身も,恒常的な範囲の顧客を確保しておくために,自分の平均需要に相応する在庫高を保 持していようとする。生産期間に対応して買い入れの時期が形成されるのであって,商品は同種 の新品で補充することができるようになるまで長短の期間にわたって在庫を形成する。このよう な在庫形成によってのみ,流通過程の,それゆえ流通過程を包括する再生産過程の,恒常性と連続 性とは確保される。

⑩Wはまだ市場にあるのに,Wの生産者にとってW'-G'がすでに終わっていることもありうる。 生産者が自分の商品が最終消費者に売れるまで在庫としておこうと思うならば,生産者は二重の 資本を動かさなければならない。一つは商品の生産者として,もう一つは商人として。商品その ものにとっては,在庫形成の諸費用が商品の生産者の負担になろうと一連の商人の負担になろう と,事柄は少しも変わらない。
⑪商品在庫が在庫----社会的生産の与えられた段階のもとで,それが商品在庫として存在しなけれ ば,生産用在庫(潜在的な生産財源) なり消費財源(消費手段の予備) なりとして存在する)--- -の商品形態に他ならない限りでは,在庫の維持に必要な費用,したがって在庫形成の費用も,ただ 社会的生産財源なり社会的消費財源なりの維持費が転化したものでしかない。
・この費用によって引き起こされる商品価値の引き上げは,色々な商品に割り当てる。この費用は 商品の種類によって違っている。在庫形成が社会的な富の一つの存在条件であっても,在庫形成 の費用は社会的な富からの控除である。

⑫商品在庫が商品流通の条件であり,しかも商品流通の中で必然的に発生した形態でもある限りで のみ,この停滞は正常。
・これに反して,流通の貯水池に滞留している諸商品が,後から追いかけてくる生産の波に場所をあ けないために,この貯水池が溢れるようになれば,その場合には流通停滞の結果として商品在庫が 膨張する。この停滞が産業資本家の倉庫で生じようと商人の倉庫で生じようと,それは問題では ない。この場合には商品在庫は商品が売れないことの結果である。費用がかかることは変わりな いが,この費用は純粋に形態から(商品を貨幣に転化させる必要とこの変態の困難)から生ずる のだから,それは商品の価値には入らないで,価値の実現にさいしての価値損失をなす。
・在庫の正常な形態と正常でない形態とは形態からは区別できないし,どちらも流通の停滞なので, この二つの現象は混同されやすい。生産者にとっては,すでに商人の手に渡っている自分の商品 の流通過程は停滞していても自分の資本の流通過程は流動していることがありうるので,ますま すこのような現象は生産当事者自身をさえだますことがありうる。
・生産と消費との大きさが膨張すれば,他の事情が変わらない限り商品在庫の大きさも膨張する。 商品在庫は同じように速く更新され吸収されるにしても,その規模は一層大きくなる。だから,流 通の停滞による商品在庫の大きさの膨張が再生産過程の拡大の兆候と見誤られうる----ことに, 信用制度の発達につれて現実の運動が神秘家されやすくなれば,そうである。
⑬在庫形成の費用は,(一) 生産物量の量的減少(たとえば穀粉在庫の場合) ,(二) 品質の悪化, (三) 在庫の維持に必要な対象化されている労働と生きている労働,とから成る。

第三節 運輸費
①流通費のあらゆる細目に立ち入る必要はない。一般的な法則は,商品の形態転化だけから生ずる 流通費は商品に価値をつけ加えないということ。流通費は価値を実現するための,または価値を 一つの形態から別の形態に移すための,費用でしかない。これに投ぜられる資本(これによって 指揮される労働も含めて) は,資本主義的生産の空費に属する。その補塡は剰余生産物のうちか らなされなければならない。この補塡は,資本家階級全体について見れば,剰余価値または剰余生 産物からの控除をなす。運輸費は重要な役割を演ずるから,さらに考察する。

②資本の循環,その一節をなす商品変態の中で,社会的労働の素材変換が行なわれる。この素材変 換は,生産物の場所変換を必要とすることもあれば,商品の物理的な運動がなくても行なわれうる。 生産物の運輸は,商品流通がなくても,また直接的生産物交換がなくてさえも,行なわれうる。家 の例。綿花や銑鉄のような可動的な商品価値でも,同じ商品倉庫に坐っていながら,幾つもの流通 過程を通り,投機師たちによって買われてはまた売られる。この場合に現実に動くものは,物の所 有権。他方,たとえばインカ帝国では,社会的生産物が商品として流通していたのでもなければ物 々交換によって分配されていたのでもないのに,運輸業が大きな役割を演じた。

③資本主義的生産の基礎の上では運輸業が流通費の原因として現われるとしても,この特殊な現象 形態は少しも事柄を変えない。
④生産物の量は運輸によってはふえない。運輸によって引き起こされるかもしれない生産物の自然 的性質の変化も,例外を除けば,意図された有用効果ではなく,必要悪である。物の使用価値は消 費によって実現され,その消費のためには場所の変換,したがって運輸業の追加生産過程が必要に なることもある。だから,運輸業に投ぜられた生産資本は,一部は運輸手段からの価値移転によっ て,一部は運輸労働による価値付加によって,生産物に価値をつけ加える。このような,運輸労働 による価値付加は,労賃の補塡と剰余労働とに分かれる。

⑤生産過程の中で労働対象の場所の変換と,それに必要な労働手段や労働力は,大きな役割を演じて いる。完成生産物が生産場所からそれとは別な遠く離れた生産場所に移されるということも,同 じ現象。生産物の運輸には,生産部面から消費部面への完成生産物の運輸が続く。生産物は,この 運動を完了したときに,はじめて消費のための完成品である。
⑥労働の生産性と労働の価値創造とが反比例するということは,商品生産の一般的な法則である。 この法則は,運輸業にもあてはまる。与えられた距離の商品運輸に必要な労働量が小さいほど,労 働の生産力はそれだけ大きい。
⑦運輸が商品につけ加えられる絶対的な価値量は,運輸業の生産力に反比例し,距離に比例する。
⑧運輸費が商品の価格につけ加える相対的な価値部分は,商品の容積と重量とに正比例する。これ を修正する事情もたくさんある(物品が比較的破損しやすいとか腐敗しやすいとか爆発しやすい とかいうこと)。この点では鉄道王たちは空想的な種類の発明では独創力を発揮する。
⑨運輸費が物品につけ加える相対的な価値部分がその物品の価値に比例するということは,鉄道王 たちにとっては,物品の価値に比例して運賃を課するための特別な理由になる。この点について の産業家や商人の苦情が繰り返されている。
⑩資本主義的生産様式は,運輸交通機関の発達,また運輸の集中(規模の大きさ)によって,個々の 商品の運輸費を減少させる。この生産様式は,生産物の大多数を商品に転化させることによって, その次には局地的市場に代わる遠隔市場をつくり出すことによって,社会的労働のうちから商品 運輸に支出される部分を増加させる。

⑪流通,すなわち商品が実際に空間を走り回るということは,商品の運輸に帰着する。運輸業は一面では一つ の独立な生産部門をなしており,したがってまた生産資本の一つの特殊な投下部面をなしている。他面では, それは,流通過程の中での,そして流通過程のための,生産過程の継続として現われるということによって, 区別される。
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by shihonron | 2011-06-28 11:00 | 学習会の報告


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