2011年 10月 25日
10月25日(火)に第242回の学習会を行いました。 「第13章 生産期間」の第18段落から最後(第24段落)までと「第14章 流通期間」の第1段落から最後(第18段落)についてレジュメに基づく報告を受け検討しました。 以下はレジュメです ⑱一定量の潜勢的な生産資本(生産用に予定された生産手段)----量の多少はあっても貯蔵されて いて,だんだん生産過程にはいっていく。与えられた一つの企業または一定の規模の資本経営で は,この生産用在庫の大きさは,その更新の困難の大小,購入市場の遠近,運輸交通手段の発達程度 などに依存する。これらの事情は,生産用在庫の形で存在しなければならない資本の最小限に影 響を与え,したがって資本前貸がなされるべき期間の長さに,そして一度に前貸しされるべき資本 量の規模に,影響を与える。この資本量の規模はまた回転にも影響する。資本量の規模は,流動資 本が単に潜勢的な生産資本として生産用在庫の形態に固着している時間の長短に制約される。 ・他方では,この滞留が迅速な補塡の可能性の大小や市場関係などにかかっているかぎりでは,この 滞留そのものがまた流通期間から,すなわち流通部面に属する諸事情から,生ずる。 ⑲「手工道具,ふるい,かご,綱,車の油,釘などのようないっさいの備品または付属品は,それを迅速 に調達できる便宜が手近に少なければ少ないほど,ますます即時補充のために在庫として存在し ていなければならない。毎年冬にはすべての手持ち道具を念入りに検査して,それらの補充や修 理が必要ならばすぐにその手配をしなければならない。手工業者や商店が近くにないところでは, より大きな在庫を用意していなければならない。必要な在庫を一度にかなり大量に調達するほう が,通例は,安く買えるという利益が得られる。そうすれば,流動経営資本のうちから,それだけ大 きな金額を引きあげることにもなる。」(キルヒホーフ) ⑳生産期間と労働期間との差は,非常にさまざま。流動資本は,本来の労働過程にはいる前に,生産 期間にはいっていることがありうる(靴型製造)。または,本来の労働過程をすませてからも生産 期間にあることがある(ぶどう酒,穀物の種子)。または,生産期間のところどころに労働期間がは さまることがある(耕作,造林)。流通可能な生産物の大きな部分は現実の生産過程に合体された ままであるが,それよりもずっと小さい部分が年々の流通に入り込む(造林,牧畜)。 ・流動資本が潜勢的な生産資本の形態で投下されなければならない期間の長短,したがってまたこ の資本が一度に投下されなければならない量の大小は,生産過程の種類から生ずることもあり(農 業),市場の遠近など,要するに流通部面に属する諸事情にかかっていることもある。 21労働期間とは一致しない生産期間を労働期間と同一視しようとする試み,すなわち,それ自身がま た価値理論の誤った適用から生じているこのような試みが,マカロックやジェームズ・ミルなどに おいてどんなに不合理な理論を呼び起こしたかは,後に見る(第三部)。 -------------- 22以前に考察した回転循環は,生産過程に前貸しされた固定資本の持続によって与えられている。 この回転循環は多かれ少なかれ何年かにわたるものだから,それはまた固定資本の年々の回転の いくつかを,または一年のうちに繰り返される回転のいくつかを含んでいる。 23農業ではこのような回転循環が輪作式耕作方法から生ずる。「借地期間の長さは,採用された輪作 の循環期間が示すよりも短く決めてはならない。三圃式経営の場合にはつねに三年,六年,九年, 等々というように計算される。純粋休耕を伴う三圃式経営では,耕地は六年間に四回だけ耕作さ れる。ところが.同じ土地でもそれぞれの穀物の種類によって多かれ少なかれ出来高が違ってお り,価値も違っており,したがってまた違った価格で売られる。いま,六年にわたる全循環期間の 年平均収穫高とその平均価格とによって耕地の収益を計算すれば,第一の循環期間についても第 二のそれについても一年当たりの総収益が見いだされる。しかし,循環期問の半分だけの,すなわ ち三年間だけの収益を計算する場合には,そうはならない。というのは,その場合には総収益が違 ってくるであろうからである。これによって,三圃式経営の場合には借地期間の長さが少なくと も六年と定められなければならない。しかし,借地人にとっても地主にとってもずっと望ましい ものであるのは,三圃式経営ならば六年のかわりに12年とか18年とかまたはもっと多くの年数と 定められ,また,七圃式経営ならば7年のかわりに14年とか28年とか定められるということであ る。」(キルヒホーフ) 24{原稿ではここに「イギリスの輪作経営。ここに注をつけること。」と書いてある。} 第14章 流通期間 ①別々の事業部門に投ぜられた別々の資本の流通期間を相違させ,資本が前貸されていなければな らない期間の相違をもたらすような,これまでに考察してきた事情は,固定資本と流動資本との区 別や労働期間の相違などと同じく,生産過程そのものの中で生ずるものである。 ・資本の回転期間は資本の生産期間と通流期間または流通期間との合計。流通期間の長さの相違は 回転期間を相違させ,回転周期の長さを相違させる。 ・回転に変化を与える他のすべての事情が同じで,流通期間だけが違う二つの異なる資本投下を比 較する,または,一資本をとって,固定資本と流動資本の構成や労働期間などを与えられたものと し,流通期間だけを仮に変化させてみる。 ②流通期間の一部分(相対的に最も決定的な一部分)は,販売期間(資本が商品資本の状態にある 期間)から成っている。この期間の相対的な長さにしたがって,流通期間が,したがってまた回転 期間一般が,長くなったり短くなったりする。保管費などの為に資本の追加投下が必要になるこ ともある。商品の販売に必要な時間が,異なる生産部門に投ぜられた諸資本量にとってだけでは なく,同じ生産部門に投ぜられた総資本の独立の一部分をなすさまざまな独立資本にとっても,非 常に違いうる。同じ個別資本にとっても販売期間は,市場関係の一般的な変動につれて,または特 殊な事業部門での市場関係の変動につれて,変動する。この点にはこれ以上立ち入らない。 ・簡単な事実の確認。一般に別々の事業部門に投ぜられている資本の回転期間の相違を生み出す一 切の事情は,すべて,それらが個別的に作用する場合(ある資本家が自分の競争相手よりも速く売 る機会をもっているとか,労働期間を短縮する方法を多く用いる場合など) には,やはり,その結 果として,同じ事業部門にある色々な個別資本の回転の相違を生み出すということ。 ③販売期間を相違させ,回転期間一般を相違させることに作用する一原因は,商品が売られる市場が その商品の生産地から遠く離れているということ。注文生産でない場合には,市場までの旅の時 間の他に,商品が販売のために市場にある時間が加わる。 ・運輸交通機関の改良は,商品の移動期間を絶対的には短縮するが,この移動から生ずるところの, 色々な商品資本のまたは同じ商品資本の中でも別々の市場に行く色々な部分の,流通期間の相対 的な差を解消しはしない。帆船や汽船の改良⇒それは近い港への旅も遠い港への旅も同じよう に短縮する。相対的な差は,減らされることも多いが,やはり残っている。相対的な差は,運輸交 通機関の発達によって,自然的距離には一致しない仕方で変えられることも有り得る。たとえば, 生産地から国内の主要な人口集中地に通じている鉄道は,それよりも近くにはあるが鉄道が通じ ていない国内の地点への距離を,自然的にはより遠い地点への距離に比べて絶対的または相対的 に長くする。また,同じ事情によって,比較的大きい販売市場そのものからの生産地の相対的な距 離が変えられることもあり,このことからは,運輸交通機関の変化につれて古い生産中心地が滅び 新しい生産中心地が興ることが説明できる(そのほか,短距離の運輸よりも長距離の運輸の方が 相対的に安くつくということが加わる)。 ・運輸機関の発達と同時に,空間運動の速度は高められ,空間的な距離は時間的に短縮されるが,た だそれだけではない。交通機関の量が増加。運輸機関の効率が与えられている場合には,絶対的 な速度(流通期間のこの部分)は変えられない。しかし,商品がより短い時間間隔で次々に旅に のぼり相次いで市場に到着できるので,発送されるまで潜勢的な商品資本として大量に堆積して いるということはなくなる。還流もまたより短い相続く期間に配分され,一部分が商品資本とし て流通しているあいだに絶えず他の一部分は貨幣資本に転化される。このように還流が次々と頻 繁に行われることによって,総流通期間は短縮され,回転も短縮される。 ・ある生産地がより大きな生産中心地となるにつれて,運輸機関の機能する頻度,たとえば鉄道の列 車数が増加し,その増加は生産と人口の大集中地や輸出港などに向かって行なわれる。だが,他方 では逆に,このように交通が特に容易であることや,それによって資本の回転が(流通期間によっ て制約される限り) 速められることは,生産中心地やその市場地の集積を促進する。このように 与えられた地点での人口と資本量との集積が促進されるにつれて,少数の手の中でのこの資本量 の集積が進行する。 ・交通機関の変化につれて生産地や市場地の相対的な位置が変化することによって,再び変転や移 動が生ずる。生産地の盛衰。運輸機関の変化によって,商品の流通期間や売買の機会などについ て場所による相違が生み出され,または既存の場所的相違の配分が変わってくる。 ④生産物の性質上おもに地方的販路に頼っている醸造業のような生産部門は,人口の主要中心地で 最も大規模に発達する。ここでは建築用地など多くの生産条件が高くつくが,資本の回転が速く なることがこれを部分的に相殺する。 ⑤資本主義的生産の進歩につれて,運輸交通機関の発達が商品の流通期間を短縮するとすれば,こ の同じ進歩と,運輸交通機関の発達は,逆に,ますます遠い市場のために,世界市場のために,仕事 をする必要を引き起こす。 ・遠隔の地に向かう商品量は絶対的にも相対的にも増大する。それと同時に,社会的富のうちの,直 接的生産手段として役立つのではなく運輸交通機関に投ぜられる部分,また運輸交通機関の経営 に必要な固定資本と流動資本とに投ぜられる部分も,増大する。 ⑥⑦生産地から販売地への商品の旅行の相対的な長さだけでも,流通期間の第一の部分である販売 期間の相違を引き起こすだけではなく,第二の部分,購買期間の相違をも引き起こす。 ・たとえば,商品がインドに送られ,4カ月かかる。販売期間はゼロ。商品は注文によって発送,引 き渡しと同時に生産者の代理人に支払がなされる。貨幣の送還に4カ月。そうすれば,同じ資本が 再び生産資本として機能できるまでに,全体で8カ月。こうして生じる回転上の相違は信用期限の 相違の物質的基礎の一つをなしている。たとえばヴェネツィアやジェノヴァでは海外貿易が一般 に本来の信用制度の起源の一つをなしている。 ・ユーザンス(手形の有効期間)の短縮 ・喜望峰回り。スエズ運河がもたらした革命的大変化(エンゲルス) ⑧商品の流通期間が長くなれば販売市場での価格変動の危険は大きくなる。 ⑨現金で支払われない場合には,手形期限の相違に照応して(一部は同じ事業部門の色々な個別資 本のあいだに個別的に,一部は色々な事業部門のあいだに)流通期間が違ってくるが,それは売 買のさいの支払期限の相違から生ずる。この点は信用制度にとって重要であるが,ここではこの 点には立ち入らない。 ⑩回転期間の相違は商品引渡契約の大きさからも生ずるが,この大きさは資本主義的生産の範囲と 規模とにつれて増大する。商品引渡契約は,市場すなわち流通部面に属する操作であるから,回転 期間の相違は流通部面から生ずるのであるが,それは直接に生産部面に跳ね返って作用する。す べての支払期限や信用関係を無視しても,したがって現金支払の場合にも,そうである。 ・石炭や綿花や糸などは分離性の生産物である。毎日生産される量がそれだけで完成生産物である。 もし紡績業者や炭鉱主が,4週間とか6週間の労働日を必要とする生産物量の供給を引き受けるな らば,資本の前貸し期間に関する限りでは,ちょうど,この労働過程で4週間とか6週間とかにわた る一つの連続的労働期間が取り入れられたようなものである。毎日できあがる量は,契約によっ て引き渡されるべき量の一部分でしかない。この場合,注文された商品のすでにできあがった部 分は,生産過程にあるのではないが,しかし潜勢的な資本として倉庫の中に寝ている。 ⑪流通期間の第二の時期,購買期間(資本が貨幣形態から生産資本の諸要素に再転化する期間)。 この期間には資本は長短の時間貨幣資本の状態に留まっていなければならない。つまり,前貸総 資本中のどの部分かが絶えず貨幣資本の状態にならなければならない。たとえば,ある一定の事 業では前貸総資本のうち n×£100 は絶えず貨幣資本の状態に,つまりその生産部面にではなく その流通部面に属する形態に,あるのである。 ⑫すでに見たように,資本が商品資本の形態に封じ込められている期間が市場の遠いことによって 引き延ばされるということは,直接に貨幣の還流の遅延を引き起こし,貨幣資本から生産資本への 資本の転化をも遅らせる。 ⑬第六章で見たように ,商品の購入に関しては,原料の主要仕入地からの距離があるために,生産用 在庫(生産資本の形態)で準備しておくことが必要。そのために,生産規模は不変でも,一度に前 貸しされねばならない資本量と,前貸しされねばならない期間とが大きくなる。 ⑭⑮比較的大量の原料が市場に放出される周期も,色々な事業部門で同様に作用する。たとえば,ロ ンドンでは3カ月毎に羊毛の大競売が行なわれて,それが羊毛市場を支配する。このような周期は, これらの原料の主要な買い入れ時期を決定し,ことにまた,これらの生産要素のための長短の前貸 を伴う思惑的な買い入れにも影響する。それは,ちょうど,生産される商品の性質が,生産物を長 短の期間思惑的にわざと潜勢的な商品資本の形態にとどめておくことに影響するようなもの。 ⑯流通期間の後半(貨幣が生産資本の諸要素に再転化)----考察されるのは,それ自体として見た この転換そのものだけではない。また,市場までの距離に応じて貨幣が還流するのにかかる時間 だけではない。何よりもまず考察されるのは,前貸資本の一部分が絶えず貨幣形態に,すなわち貨 幣資本の状態になければならない部分の大きさである。 ⑰すべての思惑を別問題とすれば,たえず生産用在庫として存在していなければならない商品の購 入量は,この在庫の更新時期にかかっており,したがって,それ自体また市場関係に左右され,そ れ故原料などが違えば違ってくる色々な事情にかかっている。だから,この場合には時々かなり 大きい額の貨幣が一度に前貸しされなければならない。この貨幣は,資本の回転に応じて遅速は あるが,絶えず少しずつ還流する。 ・その一部分は絶えず再び短期間ごとに支出される。労賃に再転化する部分である。 ・だが,原料などに再転化する他の部分は,仕入のためや支払のために準備金として比較的長い期間 積み立てておかねばならない。だから,この部分は貨幣資本の形態で存在する。もっとも,それが 貨幣資本として存在する大きさは変動するが。 ⑱次章で見るように,この他にも色々な事情が,生産過程から生ずるか流通過程から生ずるかを問わ ず,このような前貸資本の一定の部分が常に貨幣形態で存在することを必要にする。 ・ここで一般的に注意さるべきこと:事業のために必要な資本の一部分が絶えず貨幣資本,生産資 本,商品資本という三つの形態を次々に通って行くだけではなく,同じ資本の別々の部分が,たと えこれらの部分の相対的な大きさは絶えず変動するにしても,絶えず相並んでこの三つの形態を とっているということを,経済学者たちは忘れがちだということ。ことに,経済学者たちが忘れて いるのは,いつでも貨幣資本として存在している部分のことである。ところが,まさにこの事情こ そは,ブルジョア経済の理解のために非常に必要なのであり,また実際上でもその重要さを痛感さ れている。
by shihonron
| 2011-10-25 23:30
| 学習会の報告
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