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『資本論』を読む会の報告

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2006年 12月 10日

第39回  12月5日 第3章 第1節 価値の尺度

 12月5日(火)に第39回の学習会を行いました。「第3章 貨幣または商品流通 第1節 価値の尺度」の第9段落から第17段落までを輪読、検討しました。

■テキストの内容と議論    
第3章 貨幣または商品流通 第1節 価値の尺度


第9段落
・まず第一に明らかなことは、金の価値変動は、金が価格の度量標準として機能することをけっして妨げないということである。金価値がどんなに変動しても、いろいろな金量は相変わらず互いに同じ価値関係を保っている。金価値が1000%下落したとしても、12オンスの金は相変わらず1オンスの金の12倍の価値をもっているであろう。そして、価格ではただいろいろな金量の相互の関係だけが問題なのである。
・他方、1オンスの金がその価値の増減につれてその重量を変えることは決してないのだから、同様にその可除部分の重量の変わらないのであるり、したがって、金は、その価値がどんなに変動しても、いろいろな価格の固定した度量標準としては、つねに同じ役立ちをするのである。

★価格とは、貨幣商品=金の量でもって、商品の価値を表したものであった。
価格の度量単位とは、価格=金量を計量するために固定されたある金量のことであり、価格の度量標準として機能するとは、こうした度量単位によって価格=金量を計量すること、簡単に言えば、一定の金量を、ある金量を単位として計ることに他ならない。したがつて、金の価値変動は、金量相互の関係にはどんな変化ももたらさない。

第10段落
・金の価値変動はまた金が価値尺度として機能することを妨げない。金の価値変動はすべての商品に対して同時に起きるのだから、その他の事情が同じならば、金の価値変動は諸商品の相互の相対的価値には変化を起こさないのである。といっても、いまでは商品はみな以前より高いかまたは低い金価格で表されるのであるが。

●「諸商品の相互の相対的価値」とはなんのことかとの疑問が出さ次のような結論になりました。
 100グラムのお茶=1グラムの金、1枚のセーター=3グラムの金 であったとして、金の価値が二分の一に下落するならば 100グラムのお茶=2グラムの金 1枚のセーター=6グラムの金 ということになる。その際、価格(価値を表現する金量)は変わっても、1枚のセーターは100グラムのお茶の3倍の価値をもっているということにはなんの変わりもない。こうした商品相互の価値量の関係(何倍とか何分のいくつとかの)を「相互の相対的価値」といっている。

第11段落
・一商品の価値をなんらかの別の商品の使用価値で表す場合と同様に、諸商品を金で評価する場合にも、そこに前提されているのは、ただ、一定の時には一定量の金の生産には一定量の労働が必要だということだけである。商品価格の運動に関しては、一般に、以前に展開された単純な相対的価値表現の諸法則があてはまるのである。

●ここで述べている「以前に展開された単純な相対的価値表現の諸法則」は、第1章第3節 A「単純な、個別的な、または偶然的な価値形態」のb「相対的価値形態の量的規定性」で展開されているものである。(国民文庫103-105頁・原頁67-69)
 そこでは、4つの場合に分けて、価値量の変動と相対的価値の大きさの関係について解明し、「価値量の現実の変動は、価値量の相対的表現または相対的価値の大きさには、明確にも完全にも反映しないのである。一商品の相対的価値は、その価値が不変のままでも変動することがありうる。その商品の相対的価値は、その商品の価値が変動しても、不変のままでありうる。そして最後に、その商品の価値量とこの価値量の相対的表現とに同時に生ずる変動が一致する必要は少しもないのである。」とまとめている。

第12段落
・商品価格が一般的に上がるのは、貨幣価値が変わらなければ、商品価値が上がる場合だけであり、商品価値が変わらなければ、貨幣価値が下がる場合だけである。
・逆に、商品価格が一般的に下がるのは、貨幣価値が変わらなければ、商品価値が下がる場合だけであり、商品価値が変わらなければ、貨幣価値が上がる場合だけである。
・だから、貨幣価値の上昇は商品価格の比例的な低下を必然にし貨幣価値の低下は商品価格の比例的な上昇を必然にするということには、決してならないのである。そうなるということは、ただ価値の変わらなかった商品についてだけにあてはまることである。たとえば、その価値が貨幣価値と同様に同時に上がる商品は、同じ価格を保っている。もし商品の価値が貨幣価値よりもおそく上がるかはやく上がるとすれば、その商品の価格の低下または上昇は、商品の価値運動と貨幣の価値運動との差によって規定される等々。

★第11段落で指摘した「商品価格の運動」について敷衍している。

第13段落
・そこで、また価格形態の考察に帰るとしよう。

第14段落
・種々の金属重量の貨幣名は、いろいろな原因によって、しだいにそれらの元来の重量名から離れてくるのであるが、その原因のうちでは次のものが歴史的に重要である。
・(一)発展程度の低い諸民族における外国貨幣の輸入。たとえば、古代ローマでは金銀の鋳貨は最初は外国商品として流通していた。このような外国貨幣の名称は国内の重量名とは違っている。
・(二)富の発展につれて、あまり高級でない金属はより高級な金属によって価値尺度機能から駆逐される。銅は銀によって、銀は金によって。たとえこの順序がすべての詩的年代記と矛盾していようとも。
・たとえば、ポンドは、現実の1ポンドの銀を表す貨幣名だった。金が価値尺度としての銀を駆逐するやいなや、同じ名称が、金と銀との価値比率にしたがって、たとえば15分の1ポンドというような金に付着する。貨幣名としてのポンドと、金の普通の重量名としてのポンドとは、いまでは別のものになっている。
・(三)何世紀にもわたって引き続き行なわれた王侯による貨幣変造。これは鋳貨の元来の重量から実際にはただ名称だけをあとに残した。

第15段落
・このような歴史的過程は、いろいろな金属重量の貨幣名がそれらの普通の重量名から分離することを国民的慣習にする。
・貨幣度量標準は、一方では純粋に慣習的であるが、他方では一般的な効力を必要とするので、結局は法律によって規制されることになる。貴金属の一定重量部分、たとえば1オンスの金は公式にいくつかの可除部分に分割されて、それらの部分にポンドとターレルとかいうような法定の洗礼名が与えられる。そこで、このような可除部分は、貨幣の固有の度量単位として認められるのであるが、それは、さらにシリングやペニーなどのような法定の洗礼名のついた別の可除部分に細分される。
・それでもやはり一定の金属重量が金属貨幣の度量標準である。変わったのは、分割と命名である。

第16段落
・こうして、価格、または、商品の価値が観念的に転化されている金量は、いまでは金の度量標準の貨幣名または法律上有効な計算名で表現される。そこで1クォーターの小麦は1オンスの金に等しいと言うのに代わって、イギリスでならば、それは3ポンド・スターリング17シリング101/2ペンスに等しいと言われることになるであろう。
・このようにして、諸商品は、自分たちがどれだけに値するかを、自分たちの貨幣名で互いに語り合うのであり、そして、貨幣は、ある物を価値として、したがって貨幣形態に固定することが必要なときには、いつでも計算貨幣として役だつのである。

●「計算貨幣」の意味について疑問が出されましたが、明確な結論には至りませんでした。

第17段落
・ある物の名称は、その物質の性質にとってはまったく外的なものである。ある人の名がヤコブだということを知っても、その人についてはなにもわからない。それと同じに、ポンドやターレルやフランやドゥカートなどという貨幣名では、価値関係の痕跡はすべて消えてしまっている。
・これらの不可思議な章標の秘義についての混乱は、貨幣名が商品の価値を表すと同時に或る金属重量の、すなわち貨幣度量標準の可除部分をも表すので、ますますはなはだしくなる。
・他面では、価値が、商品世界の雑多な物体から区別されて、このなんだかわからない物的な、しかしまた純粋に社会的な形態に達するまで発展を続けるということは、必然的なのである。

●「秘義」とはどういう意味かが問題になり、「秘儀」(非公開で、ひそかに行う儀式。密儀)ではないことを確認しました。「学問・技芸などの深遠な本質を究めるのに必要とされる極秘の事柄や教え。奥義。極意。」という意味だという結論になりました。英語版では、cabalistic signsです。「隠された(神秘の)意味」といったところでしょうか。

●「章標」という言葉は、一般には「シンボルマーク」の意味で用いられている。英語版では、signs となっている。
【sign】[sain] ━━ n. 符号, 記号; 合図; 身ぶり, 手まね; 暗号; 看板, 標識; 証拠, しるし; 徴候 ((of)); 形跡; 〔米〕 (pl.) (野獣の)足跡; 【聖】奇跡; 【天文・占星】(十二宮の)宮(きゅう).                   (エクシード英和辞典より)

■大谷禎之介『図解 社会経済学』では次のように述べられている。
「諸商品は、自己の価値を、価格で表象された金量で表現し、互いに比較しあう。そこで、それらのさまざまの金量を計量し、同一の名称で言い表すために、技術的に、ある金量を価格の度量単位として固定する必要が生じる。
 金は、それが貨幣になる以前から、ポンド、グラム、貫などのような重量による度量単位をもっている。これらの度量単位は、さらに下位の補助単位に分割されて、オンスやミリグラムや匁(もんめ)および分(ふん)などとなり、これらの単位の全体が一つの度量標準、すなわち度量システムを形成する。
 価格で表象された金量を計量するための度量標準、つまり価格の度量標準として役立ったのは、当初は、このような重量の度量システムであった。しかし、さまざまの原因によって、貨幣商品の重量を言い表す貨幣名は、重量の度量システムから離れて、重量名とは別のものにすることが普通のこととなってくる。もとの重量名がそのまま貨幣名になっている場合でも、貨幣名が言い表す金の重量は、重量名が言い表す重量とは異なるようになる。
 価格の度量標準は、価格である観念的な金量を測るばかりでなく、貨幣である実在の金そのものを計量するのにも用いられるから、貨幣の度量標準でもある。それは、いわば、金量を測る物差しである。商品の価格で表象されている金であれ、貨幣である現実の金であれ、およそ金量を言い表すために金の諸量が度量システムとなっているとき、金は計算貨幣として機能していると言う。」(94-95頁)

■資料
円[(通貨)] えん
日本の貨幣単位。補助単位は1円=100銭,1銭=10厘。1871年新貨条例により江戸時代以来の両に代わって,1円=純金1.5gと定めたことに始まる。それまで流通していた1両とほぼ同じ金の分量を含んでいたため物価体系の移行に不難な点で採用された。のち1897年貨幣法により1円=純金750mgと定め金本位制度を確立。1917年金本位制から離脱して以後,円は金との結びつきを失い,その価値は低落したが,1932年以降は対ポンドまたは対ドル相場の安定が円価値保持の基準とされた。戦後の1949年4月以降はドル平価(1ドル=360円)を基準として,金平価(1円=純金2.4685mg)が算出されていたが,1971年12月の通貨調整で1ドル=308円,1円=純金2.65751mgに切り上げた。さらに1973年以降は変動為替相場制に移行。国際的な流通・決済手段としての円の地位が高まった。1978年には,金が通貨基準の役割からはずされたので,金に自由相場が立つようになった。さらに1985年のG5(先進5ヵ国蔵相・中央銀行総裁会議)でドル高是正のため為替市場への協調介入が決定され(プラザ合意),その後,急速な円高が進み,1995年4月には1ドル80円を切るまでに急騰した。1999年9月現在,1ドル110円前後で推移している。 「マイペディア」

【貨幣法】
鋳造貨幣について規定する法律。1897年(明治30)制定。金本位制を前提として貨幣の種類・価格の単位・品位・量目などを定めていた。1987年(昭和62)、管理通貨制度に即して廃止。  「大辞林 第二版」

by shihonron | 2006-12-10 12:03 | 学習会の報告


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