『資本論』を読む会の報告

shihonron.exblog.jp
ブログトップ
2007年 07月 08日

第65回 7月3日  第4章 貨幣の資本への転化 第2節 一般的定式の矛盾

7月3日(火)に第65回の学習会を行いました。「第2篇 貨幣の資本への転化 第4章 貨幣の資本への転化 第2節 一般的定式の矛盾」の第9段落から第19段落までを輪読、検討しました。

■テキストの内容と議論
第4章 貨幣の資本への転化 第2節 一般的定式の矛盾 
   

第9段落
・もし交換価値の等しい商品どうしが、または商品と貨幣とが、つまり等価物と等価物とが交換されるとすれば、明らかにだれも自分が流通に投ずるよりも多くの価値を流通から引き出しはしない。
・そうすれば、剰余価値の形成は行なわれない。
・しかし、その純粋な形態では、商品の流通過程は等価物どおしの交換を条件とする。
・とはいえ、ものごとは現実には純粋には行なわれない。
・そこで、次に互いに等価でないものどうしの交換を想定してみよう。

★等価交換が行なわれるなら、流通からより多くの価値を引き出すことは不可能であり、したがって剰余価値も形成されないということになる。そこで、不等価交換を想定して検討してみよう。

第10段落
・とにかく、商品市場ではただ商品所持者が商品所持者に相対するだけであり、これらの人々が互いに及ぼし合う力はただ彼らの商品の力だけである。
・いろいろな商品の素材的な相違は、交換の素材的な動機であり、商品所持者たちを互いに相手に依存させる。
・というのは、彼らのうちのだれも自分自身の欲望の対象は持っていないで、めいめいが他人の欲望の対象をもっているのだからである。
・このような、諸商品の使用価値の素材的な相違の他には、諸商品のあいだにはもう一つの区別があるだけである。
・すなわち商品の現物形態と商品の転化した形態との区別、商品と貨幣との区別である。
・したがって、商品所持者たちは、ただ、一方は売り手すなわち商品の所持者として、他方は買い手すなわち貨幣の所持者として、区別されるだけである。

■第2章交換過程の第1段落では、商品所持者について次のように述べられていた。
《商品は、自分で市場に行くことはできないし、自分で自分たちを交換し合うこともできない。だから、われわれは商品の番人、商品所持者を捜さなければならない。これらの物を商品として互いに関係させるためには、商品の番人たちは、自分たちの意志をこれらの物にやどす人として、互いに相対しなければならない。したがって、一方はただ他方の同意のもとにのみ、すなわちどちらもただ両者に共通な一つの意志行為を媒介としてのみ、自分の商品を手放すことによって、他人の商品を自分のものにするのである。それゆえ、彼らは互いに相手を私的所有者として認めあわなければならない。契約をその形態とするこの法的関係は、法律的に発展していてもいなくても、経済的関係がそこに反映している一つの意志関係である。この法律関係、または意志関係の内容は、経済的関係そのものによって与えられている。ここでは、人々はただ互いに商品の代表者としてのみ、存在する。一般に、われわれは、展開が進むにつれて、人々の経済的扮装はただ経済的諸関係の人化でしかないのであり、人々はこの経済的諸関係の担い手として互いに相対するのだということを見いだすであろう。》(国民文庫155頁・原頁99-100)

★「これらの人々が互いに及ぼし合う力はただ彼らの商品の力だけである。」とは、商品所持者相互の関係は、商品と商品との関係の人化であり、経済的関係に他ならない。そこには、人格的支配隷属関係などはない。商品所持者は、商品の代表者としてのみ存在しているのである。

■マルクスは、ここで貨幣を「商品の転化した形態」と呼んでいる。他の箇所(「第3章 第2節 流通手段 b 貨幣の流通」の第3段落 国民文庫207頁 原頁・150など)では貨幣を「諸商品の価値が独立化されたもの」と呼んでいた。

■フランス語版では《商品の有用性のあいだでのこの相違を別にすれば、商品間のもう一つの相違、商品の自然形態と商品の価値形態である貨幣との相違しか、もはや存在しない。》となっている。(146頁)

第11段落
・そこで、なにかわけのわからない特権によって、売り手には、商品をその価値よりも高く売ること、たとえばその価値が100ならば110で、つまり名目上10%の値上げをして売ることが許されると仮定しよう。
・つまり売り手は10という剰余価値を納めるわけである。
・しかし、彼は、売り手だったあとでは買い手になる。
・こんどは第三の商品所持者が売り手として彼に出会い、この売り手もまた商品を10%高く売る特権をもっている。
・かの男は、売り手としては10の得をしたが、次に買い手としては10を損することになる。
・成り行きの全体は実際には次のようなことに帰着する。
・すべての商品所持者が互いに自分の商品を価値よりも10%高く売り合うので、それは、彼らが商品を価値どおりに売ったのとまったく同じことである。
・このような、諸商品の一般的な名目的値上げは、ちょうど、商品がたとえば金の代わりに銀で評価されるような場合と同じ結果を生みだす。
・諸商品の貨幣名、すなわち価格は膨張するであろうが、諸商品の価値関係は変らないであろう。

●「諸商品の一般的な名目的値上げについては、金の生産性の上昇(金の価値の減少)の場合でも言えるし、その方がわかりやすいように思える」との発言がありました。

第12段落
・今度は、逆に、商品をその価値よりも安く買うことが買い手の特権だと仮定してみよう。
・ここでは、買い手が再び売り手になるということを思い出す必要さえもない。
・彼は、買い手になる前にはすでに売り手だつたのである。
・彼は買い手として10%もうける前に、売り手としてすでに10%損をしていたのである。
・いっさいはやはり元のままである。

●「商品所持者について、これまでのところでは一貫して商品所持者は、自分で生産した商品を売り、そうして手に入れた貨幣で自分が必要とするものを買うような人々とされている。商品所持者=商品生産者といえる」との発言がありました。

第13段落
・要するに、剰余価値の形成、したがってまた貨幣の資本への転化は、売り手が商品をその価値よりも高く売ることによっても、また、買い手が商品をその価値よりも安く買うことによっても、説明することができないのである。

第14段落
・そこで、問題外の諸関係をこっそりもちこんで、たとえばトレンズ大佐などといっしょに次のようなことを言ってみても、問題は少しも簡単にはならない。
・「有効需要とは、直接的交換によってであろうと間接的交換によってであろうと、商品と引き換えに、資本のすべての成分のうちの、その商品の生産に費やされるよりもいくらか大きい部分を与える、という消費者の能力と性向(!)とにある。」

第15段落
・流通のなかでは生産者と消費者とはただ売り手と買い手として相対するだけである。
・生産者にとつての剰余価値は、消費者が商品に価値よりも高く支払うということから生ずる、と主張することは、商品所持者は売り手として高すぎる価格で売る特権を持っているという簡単な命題に仮面をつけることでしかない。
・売り手はその商品を自分で生産したか、またはその商品の生産者を代表しているか、どちらかであるが、同様に買い手も彼の貨幣に表わされた商品を生産したか、またはその生産者を代表しているか、どちらかである。
・だから、ここで相対するのは、生産者と生産者とである。
・彼らを区別するものは、一方は買い、他方は売る、ということである。
・商品所持者は、生産者という名では商品をその価値よりも高く売り、消費者という名では商品に高すぎる価格を払うのだ、と言ってみても、それは、われわれを一歩も前進させるものではない。

●売り手が「その商品の生産者を代表している」とはどういう場合のことかとの疑問が出され、「父が生産した野菜をその子供が売りに出るといった場合が考えられるのではないか」との発言がありました。買い手が彼の貨幣に表わされた商品の生産者を代表するについても問題になりましたが、明確な結論は出ず、商品所持者は、商品の代表者であり、商品の人格化したものであることを押さえておこうということになりました。

■フランス語版では「その商品の生産者を代理する」と訳されている。

第16段落
・それゆえ、剰余価値は名目上の値上げから生ずるとか、商品を高すぎる価格で売るという売り手の特権から生ずるという幻想を徹底的に主張する人々は、売ることなしにただ買うだけの、したがってまた生産することなしにただ消費するだけの、一つの階級を想定しているのである。
・このような階級の存在は、われわれがこれまでに到達した立場すなわち単純な流通の立場からは、まだ説明のできないものである。
・しかし、ここでは先回りしてみることにしよう。
・このような階級が絶えずものを買うための貨幣は、交換なしで、無償で、任意の権原や強力原にもとづいて、商品所持者たち自身から絶えずこの階級に流れてこなければならない。
・この階級に商品を価値よりも高く売るということは、ただで引き渡した貨幣の一部再びをだまして取りもどすというだけのことである。
・たとえば、小アジアの諸都市は年々の貨幣貢租を古代ローマに支払った。
・この貨幣でローマはそれらの都市から商品を買い、しかもそれを高すぎる価格で買った。
・小アジア人はローマ人をだました。
・というのは、彼らは商業という方法で征服者から貢租の一部分を再びだまし取ったからである。
・しかし、それにもかかわらず、やはり小アジア人はだまされた人々であった。
・彼らの商品の代価は、相変わらず彼ら自身の貨幣で彼らに支払われたのである。
・こんなことはけっして致富または剰余価値形成の方法ではないのである。

■フランス語版では《このような階級が不断に買うために使う貨幣は、無償で、交換なしに、自発的にまたは既得権によって、生産者の金庫からこの階級の金庫に不断に戻ってこなければならない》となっている。(148頁)

●「単純な流通の立場」とは「資本主義社会から抽象することによって取り出された商品生産者の社会」と言うことだろうとの発言がありました。

■フランス語版では「単純な流通の観点」となっている。

●「売ることなしにただ買うだけの、したがってまた生産することなしにただ消費するだけの、一つの階級」とは何をさしているのかが問題となり、「地主や貴族などのことではないか」との発言がありました。

●ローマと小アジアのことが例として取り上げられているが適切なのだろうかとの疑問が出されました。

■権原 けんげん
〔法〕 ある行為をなすことを正当とする法律上の原因。(大辞林 第二版)

■小アジア=アナトリア 
古くは小アジアとも呼ばれる。トルコ語ではアナドルAnadulu。アジア西部にあり,黒海,エーゲ海,地中海に囲まれた半島。マルマラ海を隔ててバルカン半島と対する。現在のトルコの大部分を占める。高原状台地で,北にクゼイアナドル(ポントス)山脈,南にトロス山脈が走る。海岸は地中海式気候,内陸は雨量も少なく草原,砂漠をなす。主産物は穀物,果実,ヒツジ,クロム,銅など。アナトリアの歴史は古く,世界最古の鉄器使用地といわれる。前2000年ころにはヒッタイト王国が成立した。ローマ帝国領などを経て,11世紀ころトルコ人の移住が始まり,以降トルコ人の居住地となる。ヨーロッパとアジアを結ぶ東西交渉の舞台であり,ボスポラス海峡,ダーダネルス海峡を擁し,現在も戦略的に非常に重要な位置を占める。

第17段落
・そこで、われわれは、売りは買い手であり買い手は売り手であるという商品交換の限界のなかにとどまることにしよう。
・われわれの当惑は、ことによると、われわれが登場人物を人格化された範疇としてとらえているだけで、個人としてとらえていないということからきているのかもしれない。

■フランス語版では《我々の困惑はおそらく、流通当事者たちの個々の性格をなんら考慮せず、彼らを擬人化された範疇としたことから、生じているのであろう。》となっている。(148-149頁)

第18段落
・商品所持者Aは非常にずるい男で、仲間のBやCをだますかもしれないが、BやCのほうはどうしても仕返しができないということにしよう。
・Aは40ポンド・スターリングという価値のあるぶどう酒をBに売って、それと引き換えに50ポンド・スターリングという価値のある穀物を手に入れるとしよう。
・Aは彼の40ポンドを50ポンドに転化させた。
・より少ない貨幣をより多くの貨幣にし、彼の商品を資本に転化させた。
・もう少し詳しく見てみよう。
・交換が行なわれる前には、Aの手には40ポンド・スターリングのぶどう酒があり、Bの手には50ポンド・スターリングの穀物があって、総価値は90ポンド・スターリングだった。
・交換のあとでも、総価値は同じく90ポンド・スターリングである。
・流通する価値は少しも大きくなっていないが、AとBとへのその配分は変っている。
・一方では剰余価値として現われるものは他方では不足価値であり、一方でプラスとして現われるものは他方ではマイナスとして現われる。
・同じ変化は、Aが交換という仮装的な形態によらないでBから直接に10ポンドを盗んだとしても、起きたであろう。
・流通する価値の総額をその分配の変化によってふやすことはできないことは明らかであって、それはちょうど、あるユダヤ人がアン王女時代の1ファージング貨を1ギニーで売っても、それで一国の貴金属量をふやしたことにはならないようなものである。
・一国の資本家階級の全体が自分で自分からだまし取ることはできないのである。

●「博打や投機において、一方の儲けは他方の損失になり、プラスマイナスゼロで総計は変らないのと同じことだ」との発言がありました。

■ゼロサムゲーム  [zero-sum game]
ゲームの理論で、参加者それぞれの選択する行動が何であれ、各参加者の得失点の総和がゼロになるゲーム。零和ゲーム。(大辞林 第二版)

第19段落
・要するにどんなに言いくるめようとしても、結局は同じことなのである。
・等価物どおしが交換されるとすれば剰余価値は生まれないし、非等価物どおしが交換されるとしてもやはり剰余価値は生まれない。
・流通または商品交換は価値を創造しないのである。


[PR]

by shihonron | 2007-07-08 18:00 | 学習会の報告


<< 第66回 7月10日 第4章 ...      第64回  6月26日  第4... >>