『資本論』を読む会の報告

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2007年 08月 31日

第71回 8月28日  第4章 貨幣の資本への転化 第3節 労働力の売買

8月28日(火)に第71回の学習会を行いました。「第2篇 貨幣の資本への転化 第4章 貨幣の資本への転化 第3節 労働力の売買」の第19段落から最後(第22段落)までを輪読、検討しました。

■テキストの内容と議論
第4章 貨幣の資本への転化 第3節 労働力の売買
     

第19段落
・この独自な商品、労働力の特有な性質は、買い手と売り手とが契約を結んでもこの商品の使用価値はまだ現実に買い手の手に移ってはいないということをともなう。
・労働力の価値は、他のどの商品とも同じに、労働力が流通過程にはいる前から決定されていた、というのは、労働力の生産のためには一定量の社会的労働が支出されたからであるが、しかし、その使用価値は後で行なわれる力の発揮においてはじめて成り立つのである。
・だから、力の譲渡と、その現実の発揮すなわちその使用価値としての定在とが、時間的に離れているのである。
・しかし、このような商品、すなわち売りによる使用価値の形式的譲渡と買い手へのその現実の引き渡しとが時間的に離れている商品の場合には、買い手の貨幣はたいてい支払手段として機能する。
・資本主義的生産様式の行なわれる国ではどの国でも、労働力は、売買契約で確定された期間だけ機能してしまったあとで、たとえば各週末に、はじめて支払を受ける。
・だから、労働者はどこでも労働力の使用価値を資本家に前貸しするわけである。
・労働者は、労働力の価値の支払を受ける前に、労働力を買い手に消費させるのであり、したがって、どこでも労働者が資本家に信用を与えるのである。
・この信用貸しがけっして空虚な妄想ではないということは、資本家が破産すると信用貸しされていた賃金の損出が時おり生ずるということによってだけではなく、多くのもっと持続的な結果によっても示されている。
・とはいえ、貨幣が購買手段として機能するのか支払手段として機能するのかは、商品交換そのものの性質を少しも変えるものではない。
・労働力の価格は、家賃と同じように、あとからはじめて実現されるとはいえ、契約で確定されている。
・労働力は、あとからはじめて代価を支払われるとはいえ、すでに売られているのである。
・だが、関係を純粋に理解するためには、しばらくは、労働力の所持者はそれを売ればそのつどすぐに約束の価格を受け取るものと前提するのが、有用である。

●賃金は、労働力の消費が終わったのちに支払われるのは一般的なのだろうかという疑問が出されました。公務員は、当月分の賃金を15日に支払われている、民間では月末締めで翌月の決まった日に支払われたり、日給月給制では労働してはじめてカウントされるといった例が出されました。すべてではないにしても、「後払い」が大きな部分を占めているのではないかとの発言がありました。

■ 労働基準法では以下のようになっている。
《(賃金の支払)第24条 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。賃金は、毎月1回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金(第89条において「臨時の賃金等」という。)については、この限りでない。
(非常時払)第25条 使用者は、労働者が出産、疾病、災害その他厚生労働省令で定める非常の場合の費用に充てるために請求する場合においては、支払期日前であつても、既往の労働に対する賃金を支払わなければならない。 》
 労働基準法は、支払日前の既往の労働にたいする支払義務についてのべており、賃金が既往の労働にたいするものであることを前提しているようである。

■労働債権について
《1) 労働債権とはどのようなものか

① 労働債権;  月々の給料(賃金)・残業や休日出勤の割増賃金,退職金,解雇予告手当など  就業規則通り・法律通りに払われていなければ,過去2年間分は労働債権として請求できる。社内預金は,労働債権として扱われない場合があるから注意がいる。  労働基準法 第115条(時効) 「この法律の規定による賃金(退職手当を除く。),災害補償その他の請求権は二年間,この法律の規定による退職手当の請求権は五年間行わない場合においては,時効によつて消滅する。」

② 労働債権の優先性
・労働者は賃金が払われないとたちどころに生活できなくなってしまう。売掛金や貸付金もそれに一家の生活がかかっているという人もないとはいえないかもしれないけれど,普通は,商売をしていてその一部が焦げ付きになったり貸し倒れになったりということで,労働者の賃金の不払いの深刻さはその比較にならない。だから,法律はいろいろと労働債権を保護する決まりを設けている。
・一般の買掛金債務や借入金債務を支払わなくてもそれだけで罰金を科されるということはない。はじめから返すつもりもないのに借金をしたり,代金を支払うつもりがないのに商品を買い入れたらそれは詐欺という犯罪になるが,そうでない限り,払えるのに借金を返さない,払えるのに代金を支払わないというだけでは犯罪にはならない。しかし,労働者が同意したのでない限り,賃金の遅配・欠配は,犯罪となる。

労働基準法24条「賃金は通貨で,直接労働者に,その全額を支払わなければならない」,労働基準法120条1項「労働基準法24条違反は30万円以下の罰金」。つまり,賃金不払は犯罪。

・民法・商法等で労働債権は,他の売掛金や貸付金よりも優先的に弁済されるという労働債権の優先性を保障=先取特権。先取特権のある労働債権を証明すれば,正式の裁判手続きを経ることなく,いきなり,裁判所に使用者の財産に対する差押や競売等の申立を行って,債権回収できる。(いわば,抵当権を付けた住宅ローンのようなもの)。》

 枚方法律事務所のホームページより引用 http://www.hirakata-lawoffice.com/kouen2.htm

●《売りによる使用価値の形式的譲渡と買い手へのその現実の引き渡しとが時間的に離れている商品》とは、具体的にどんな商品なのかとの疑問が出されました。後の箇所で家賃について述べられており、「家屋の利用」がそうではないかとの発言がありました。また、家屋の利用については、「第3章第3節 貨幣 b 支払手段」でも取り上げられていたとの紹介がありました。
《ある種の商品の利用、たとえば家屋の利用は、一定の期間を定めて売られる。その期限が過ぎてからはじめて買い手はその商品の使用価値を現実に受け取ったことになる。それゆえ、買い手はその代価を支払う前に、それを買うわけである。》(国民文庫238頁・原頁149)

★《多くのもっと持続的な結果》については、注51で述べている。注51では、賃金が「後ばらい」であるため、労働者は掛け買いを余儀なくされ、そのために劣悪な商品を買うしかなかったり、普通より高い価格で買わざるをえなかったりすることが指摘されている。

第20段落
・いま、われわれは労働力というこの独特な商品の所持者に貨幣所有者から支払われる価値の規定の仕方を知った。
・この価値と引き換えに貨幣所有者が受け取る使用価値は、現実の使用で、すなわち労働力の消費過程で、はじめて現われる。
・この過程に必要なすべての物、原料その他を、貨幣所持者は商品市場で買い、それに十分な価格を支払う。
・労働力の消費過程は同時に商品の生産過程であり、また剰余価値の生産過程である。
・労働力の消費は、他のどの商品の消費とも同じに、市場すなわち流通部面の外で行なわれる。
・そこで、われわれも、このそうぞうしい、表面で大騒ぎをしていてだれの目にもつきやすい部面を、貨幣所持者や労働力所持者といっしょに立ち去って、この二人について、隠れた生産の場所に、無用の者は立ち入るな[No admittance except on business ]と入り口に書いてあるその場所に行くことにしよう。
・ここでは、どのようにして資本が生産するかということだけではなく、どのようにして資本そのものが生産されるかということもわかるであろう。
・貨殖の秘密もついにあばき出されるにちがいない。

★ 労働力はどんな点で独特な商品といえるのか。
《価値の源泉であるという独特な性質をその使用価値がもっている》(国民文庫293頁・原頁181)
《人間の肉体すなわち生きている人格のうちに存在して》いる。(国民文庫294頁・原頁181)
《一時的に、一定の時間を限って》売られる。(国民文庫295頁・原頁182)
《労働力の価値規定は、他の商品の場合とは違って、ある歴史的な精神的要素を含んでいる。》(国民文庫300頁・原頁185)
《力の譲渡と、その現実の発揮すなわちその使用価値としての定在とが、時間的に離れている》(国民文庫304頁・原頁188)

●《どのようにして資本が生産するか》という表現について、「これまでわれわれは資本とは自己増殖する価値であるととらえてきた。この箇所で述べていることは、どのようにして資本家が生産するのかということだろうか」との発言がありました。

■ 「 No admittance except on business 」は、機械翻訳すると「当事者外立ち入り禁止」

第21段落
・労働力の売買が、その限界のなかで行なわれる流通または商品交換の部面は、じっさい天賦の人権のほんとうの楽園だった。
・ここで支配しているのは、ただ、自由、平等、所有、そしてベンサムである。
・自由! なぜならば、ある一つの商品たとえば労働力の買い手も売り手も、ただ彼らの自由な意志によって規定されているだけだから。
・彼らは自由な、法的に対等な人として契約する。
・契約は、彼らの意志がそれにおいて一つの共通な法的表現を与えられる最終結果である。
・平等! なぜならば、彼らはただ商品所持者として互いに関係し合い、等価物と等価物とを交換するのだから。
・所有! なぜならば、どちらもただ自分のものを処分するだけだから。
・ベンサム! なぜならば、両者のどちらにとっても、かかわるところはただ自分のことだけだから。
・彼らをいっしょにして一つの関係のなかに置くただ一つの力は、彼らの自利の、彼らの個別的利益の、彼らの私的利害の力だけである。
・そして、このように各人がただ自分のことだけを考え、だれも他人のことは考えないからこそ、みなが、事物の予定調和の結果として、またはまったく抜け目のない摂理のおかげで、ただ彼らの相互の利益の、公益の、全体の利益の、事業をなしとげるのである。

■最初の部分は、新日本出版社版では《労働力の売買がその枠内で行なわれる流通または商品交換の部面は、実際、天賦人権の真の楽園であった。》となっている。

■ベンサム [Jeremy Bentham]
(1748-1832) イギリスの法学者・思想家。人間は快楽を追求し苦痛を避ける功利的存在であるとし、すべての道徳・立法の根拠は「最大多数の最大幸福」の実現にあるとした。著「道徳と立法の原理序説」など。 (大辞林 第二版)

■摂理 〔providence〕キリスト教で、この世の出来事がすべて神の予見と配慮に従って起こるとされること。 (大辞林 第二版)

■ 予定調和
〔哲〕〔(フランス) harmonie préétablie〕ライプニッツの説で、単純で相互独立的なモナドの合成体である世界は神の意志によってあらかじめ調和すべく定められているのだという考え。 (大辞林 第二版)

■神の見えざる手
市場経済の自動調節機構をいう語。経済活動を個々人の私利をめざす行為に任せておけば「神の見えざる手」により社会全体の利益が達成される、というアダム=スミスの経済社会思想を示す語。 (大辞林 第二版)

■「神の見えざる手」とはいったい誰が言い出した言葉なのだろう?
アダム・スミスが「神の見えざる手」という言葉を使ったと書かれていることが多いが、その根拠をきちんと提示しているものを見たことがない。「諸国民の富(国富論)」の中では、単に「見えざる手(invisible hand)」という言葉が、第四篇第二章において、ただ一箇所使用されているだけである。
「酔狂人の異説」より引用  http://d.hatena.ne.jp/suikyojin/20041126

第22段落
・この単純な流通または商品交換の部面から、卑俗な自由貿易論者は彼の見解や概念を取ってくるのであり、また資本と賃労働との社会についての彼の判断の基準をとってくるのであるが、いまこの部面を去るにあたって、われわれの登場人物たちの顔つきは、見受けるところ、すでにいくらか変っている。
・さっきの貨幣所持者は資本家として先に立ち、労働力所持者は彼の労働者として後についていく。
・一方は意味ありげにほくそえみながら、せわしげに、他方はおずおずと渋りがちに、まるで自分の皮を売ってしまってもはや革になめされるよりほかにはなんののぞみもない人のように。

●「卑俗な自由貿易論者」とはどんな人たちをさしているのかとの疑問が出されましたが、結論は出ませんでした。

■「自分の皮を売ってしまって」について、新日本出版社版には《普通は「危険をしょい込む」「不快な結果に絶える」を意味する慣用句であるが、マルクスは語句どおりに用いて風刺している》との注がついている。

★9月22に誤字を訂正しました。 


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by shihonron | 2007-08-31 00:00 | 学習会の報告


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