2008年 04月 07日
第4編 相対的剰余価値の生産 s.331 ⑨ 図1----もし1労働時間が,6ペンス(1/2 シリング)の金量で表されるとすれば,12時間労働日には6シリングの価値が生産される。与えられた労働の生産力で,この12労働時間に12個の商品が仕上げられる。各個の商品に消耗された原料などの生産諸手段の価値が,6ペンスとしよう。このような事情のもとでは,個々の商品は1シリングになる。 図2----ある資本家が労働の生産力を二倍にし,12時間労働日において24個を生産することができるとしよう。生産諸手段の価値が変わらなければ,個々の商品の価値は,今や9ペンスに下がる。新価値は,今や二倍の生産物に配分される。生産物1個について計算すると,以前は生産諸手段にまる1労働時間がつけ加えられたが,今では半労働時間がつけ加えられるにすぎない。この商品の個別的価値は,今や,その社会的価値(1シリング=社会的労働の2時間)よりも低い。その一個は9ペンスにしかならない。しかし,一商品の現実の価値は,その社会的価値(その生産に社会的に必要な労働時間によってはかられる)である。新しい方法を用いる資本家が彼の商品をその社会的価値1シリングで売るならば,彼は,個別的価値よりも3ペンス高く商品を売るのであり,3ペンスの特別剰余価値を実現する。 図3----12時間労働日は,今や彼にとって,以前のように12個ではなく24個の商品で表される。したがって,一労働日の生産物を売るために,彼は二倍の販路・二倍の大きさの市場を必要とする。他の事情が同じであれば,彼の諸商品は,価格の引き下げによってのみ,より大きな市場圏を獲得する。したがって彼は,その諸商品を個別的価値以上で,しかし社会的価値以下で,たとえば一個10ペンスで,売るであろう。こうして彼は,一個あたり一ペンスの特別剰余価値をたたき出す。剰余価値のこの増大が彼に生じるのは,彼の商品が生活必需品の範囲に属しているかどうかにはかかわりがなく,したがって労働力の一般的価値を規定するものとしてこの価値の中に入りこむかどうかにはかかわりがない。したがって,後のほうの事情はさておき,個々の資本家にとっては,労働の生産力を高めることによって商品を安くしようとする動機が存在する。 ⑩ それにもかかわらず,この場合でさえも,剰余価値の生産の増大は,必要労働時間の短縮とこれに対応する剰余労働の延長とから生じる。 図2----24個=18シリング(1個9ペンス)-----個別的価値 この商品を社会的価値(1個1シリング=12ペンス)で売れば,1個当り3ペンスの特別剰余価値 しかし,2倍の市場が必要になる。そこで 図3----1個10ペンスで売る。-----それでも,1個当り1ペンスの特別剰余価値 合計240ペンス=20シリングで販売 不変資本補填分,労働力の価格,剰余価値を生産物個数で表わす ・生産手段の価値(不変資本,12シリング=144ペンス)補填分は 14 2/5 個の商品 ・12時間の1労働日=残り9 3/5 個の商品で表わされる=8シリング 社会的平均労働の12時間は,6シリングで表されるにすぎない。例外的な生産力の労働は,力を高められた労働として (potenzierte Arbeit)作用する⇒同じ時間内に,同じ種類の社会的平均労働よりも大きい価値を作り出す。 ・労働力の価格は5シリング=6個の生産物 残り3 3/5 個に剰余労働が表わされる ( 社会的平均は 5:1 ) + *必要労働(6個,5シリング):剰余労働(3 3/5 個,3シリング)=5:3 -+ 価値生産物を時間で表わす ・12時間労働で5+3=8シリングの価値を生産-----1時間で8ペンス 労働力の価値(= 5シリング(60ペンス)=必要労働)を再生産するためには,10時間ではなく 7 1/2 時間しか必要でない 剰余労働は残り 4 1/2 時間 =3シリング (これまでは,2時間=1シリングであり,2 1/2 時間増えた) 改良された生産方法を用いる資本家は,同業の他の資本家たちよりも,労働日のより大きい部分を剰余労働として取得する。彼は,資本が相対的剰余価値の生産に際して一般的に行うことを,個別的に行うのである。しかし他面,この新しい生産方法が普及し,より安く生産された諸商品の個別的価値と社会的価値との差が消滅するやいなや,右の特別剰余価値も消滅する。 労働時間による価値規定の法則は,新しい方法を用いる資本家には,彼の商品を社会的価値以下で売らなければならないという形態で感知されるのだが,この同じ法則が,競争の強制法則として,彼の競争者たちを新しい生産方法の採用にかり立てる。一般的剰余価値率が,結局,全過程を通じて影響を受けるのは,労働の生産力の向上が,生活必需品の生産諸部門をとらえた場合,すなわち,生活必需品の範囲に属し,したがって労働力の価値の諸要素を形成している諸商品を安くした場合に限られる。 ⑪ 商品の価値は,労働の生産力に反比例する。労働力の価値も,同じく労働の生産力に反比例する。これに反して,相対的剰余価値は,労働の生産力に正比例する。 12時間という社会的平均労働日は,貨幣価値が変わらないものと前提すれば,つねに6シリングという同じ価値生産物を生産する。それは,この価値総額が,労働力の価値の等価物と剰余価値とのあいだにどう配分されるかにはかかわりがない。 しかし,生産力が上がった結果,日々の生活手段の価値,したがって労働力の日価値が5シリングから3シリングに下がると,剰余価値は1シリングから3シリングに上がる。労働力の価値を再生産するために,かつては10労働時間が必要であったが,今ではもう6労働時間しか必要としない。4労働時間が自由になったのであり,それは剰余労働の範囲に併合されうる。それゆえ,商品を安くするために,そして商品を安くすることによって労働者そのものを安くするために,労働の生産力を増大させることは,資本の内在的な衝動であり,不断の傾向である。 ⑫ 商品の絶対的価値は,その商品を生産する資本家にとって,それ自体(an und für sich),どうでもよいことである。彼が関心を持つのは,商品の中に潜んでいて,販売の際に実現されうる剰余価値だけである。剰余価値の実現は,おのずから,前貸価値の補填を含む。さて,商品の価値は労働の生産力の発展に逆比例して低下するが,相対的剰余価値は労働の生産力の発展に正比例して増大するということから,すなわち,この同一の過程が,諸商品を安くし,しかもそれに含まれている剰余価値をたえず増大させるということから,交換価値の生産だけを問題とする資本家が,諸商品の交換価値をたえず低下させようと努力するのはなぜか,という謎が解けるのである。それは,経済学の一創始者ケネーが彼の論敵たちを悩ました一つの矛盾であり,それに対して,彼らはいまだに返答をしていない。 ・ ケネーは,次のように言う-----「諸君も認めるように,生産をさまたげずに,手工業生産物の製造における諸費用または費用のかかる諸労働を節約することができればできるほど,この節約は,ますます有利である。なぜなら,その節約は,製品の価格を引き下げるからである。それにもかかわらず,諸君は,手工業者たちの労働から生まれる富の生産は,彼らの製品の交換価値を増大することにあると信じている」。 ⑬ 労働の生産力の発展による労働の節約は,資本主義的生産においては,決して労働日の短縮を目的とはしない。それは,一定量の商品の生産に必要な労働時間の短縮を目的としているにすぎない。労働者が,彼の労働の生産力を増大させて,一時間に,たとえば,以前の10倍の商品を生産し,したがって商品一個あたりについて10分の1の労働時間しか必要としないということは,彼に従来どおり12時間働かせ,12時間のあいだに以前のように120個ではなくて1200個を生産させることを,決してさまたげるものではない。それどころか,彼の労働日が同時に延長され,その結果,彼は今や14時間のあいだに1400個を生産するなどということもありえる。労働の生産力の発展は,資本主義的生産の内部では,労働日のうち労働者が自分自身のために労働しなければならない部分を短縮し,まさにそのことによって,労働日のうち労働者が資本家のためにただで労働することのできる他の部分を延長することを,目的としている。このような結果が,諸商品を安くしなくても,どの程度達成できるものであるかは,相対的剰余価値の特殊な生産諸方法において示されるであろう。今やわれわれは,この考察に移ることにする。
by shihonron
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