2009年 12月 15日
12月15日(火)に第170回の学習会を行いました。「第3節 労働力の購買と販売」の第1段落から最後(第22段落)までについてレジュメをもとにした報告を受け、第1段落から第9段落までを検討しました。 以下は当日配布されたレジュメです。 第4章 第3節 労働力の購買と販売 ①資本に転化すべき貨幣の価値の変化は第一の流通行為であるG-Wで買われる商品のうちに起こらなければならない。それは労働力商品である。 ②労働力というのは、人間の肉体のうちに実存している。 ③貨幣所有者が商品としての労働力を市場で見いだす条件 ・第一の条件は労働力の所有者が彼の労働力を自由に処分することができること。時間を限って労働力を売ることが必要。 ④・第二の条件は労働力の所有者が自分の労働の対象化された商品を売ることができないで、労働力そのものを商品としれ売りに出すしかないこと。 ⑤それ以外のものを売ろうとするなら、生産諸手段を所有していなければならない。また生活諸手段も必要。 ⑥したがって、貨幣を資本に転化させるためには、貨幣所有者は市場で自由な労働者を見いださなくてはならない。人格的にも自由であり、生産手段からも自由であるという二重の意味で自由な労働者を。 ⑦一方の側に貨幣所有者を、他方の側に単なる労働力の所有者を生み出すのは自然のなせる技ではなく、先行の歴史的発展の結果であり、幾多の経済的変革の産物、すなわち社会的生産の全一連の古い諸構成体の没落の産物である。 ⑧さきに考察した経済的諸カテゴリーもまた、自己の歴史的な痕跡を帯びている。 すべての、あるいは多数の生産物が商品としての形態をとるのは資本主義的生産様式の基礎の上でのみおこるのであるが、商品生産および商品流通は生産物の圧倒的大部分が自家需要向けに生産されていても起こりうる。商品としての生産物の出現は、使用価値と交換価値との分離がすでに完成されていることを条件とする。しかしこのような発展段階は歴史的にはなはだしく異なる経済的社会諸構成体に共通のものである。 ⑨他方、貨幣を考察するならば、貨幣は商品交換の一定の発展程度を前提する。しかし、貨幣の諸形態―商品等価物、流通手段、支払手段、世界貨幣―が形成されるためには、商品流通の比較的わずかな発達で十分である。資本については事情は異なる。資本は、生産諸手段および生活諸手段の所有者が、自由な労働者を市場で見いだす場合にのみ成立するのであり、この歴史的条件は一つの世界史を包括する。 ⑩労働力の価値はどのようにして規定されるのか? ⑪労働力の価値は、他のどの商品とも同じく、この独特な物品の生産に、したがってまた再生産に必要な労働時間によって規定されている。労働力の生産とは生きた個人の再生産または維持のことである。このために一定量の生活手段を必要とするが、一定の国、一定の時代については、必要生活諸手段の平均範囲は与えられている ⑫労働力の所有者は死をまぬがれない。貨幣の資本への転化の継続は、労働者を市場で継続的に見いだすことが前提。したがって労働力の生産に必要な生活手段の総額は、補充人員すなわち労働者の子供たちの生活諸手段を含むのであり、こうしてこの独自な商品所有者の“種族”が商品市場で自己を永久化するのである。 ⑬労働力の養成費は労働力の性格がより複雑なものであるかないかの程度に応じて異なる。 ⑭労働力の価値はある一定額の生活諸手段の価値に帰着する。それゆえ、この価値はその生活諸手段の生産に必要な労働時間の大きさとともに変動する。 ⑮労働力の生産に日々必要な諸商品の総量をAとし、週ごとに必要な諸商品の総量をBとし、四半期ごとに必要な諸商品の総量をC、等々とすればこれらの商品の日々の平均はこれらのすべての和(365A+52B+4C+等々)を365で除した数量であろう。もし一平均日に必要なこの商品総量のうちに六時間の社会的労働が潜んでいるとすれば、労働力のうちには毎日、半日分の社会的平均労働が対象化されていることになる。それが三シリングまたは一ターレルという金量で表されるとすれば、一ターレルは労働力の日価値に相当する価格である。自分のターレルを資本に転化させたい貨幣所有者はこの価値を支払う。 ⑯労働力の価値の最低限界をなすものは、肉体的に必要不可欠な生活諸手段の価値である。もし労働力の価格がこの最低限にまで下がるならば、それは労働力の価値以下への低下である。 ⑰ロッシの嘆き―「労働能力を、生産過程中にある労働の維持諸手段を考慮に入れずに把握することは、幻想を把握するに等しい。労働と言う人、労働能力と言う人は、・・・労働者および労賃のことを言っているのである」 ⑱労働能力と言っている人が労働のことを言っているのではないということは、ちょうど消化能力と言っている人が消化のことを言っているのではないのと同じことである。労働能力と言う人は、労働能力の維持に必要な生活諸手段を考慮しないわけではない。それどころか、その生活諸手段の価値が労働能力の価値で表現されているのである。労働能力が売れないならば、それは労働者にとってなんの役にも立たない。 ⑲労働力の価値はそれが流通に入る前に規定されていたが、労働力の使用価値はそのあとで行われる力の発揮のなかではじめて存立する。販売による使用価値の形式的譲渡と買い手へのそれの現実的引き渡しとが時間的に離れている商品の場合には、買い手の貨幣は、たいてい支払手段として機能する。それゆえどこでも労働者が資本家に信用貸しするのである。 ⑳いまではわれわれは労働力の所有者に支払われる価値がどのように規定されるかを知っている。この商品の使用価値は、労働力の現実の使用、すなわちその消費過程においてはじめて現れる。貨幣所有者はこの過程に必要なすべての物を商品市場で買い、それらに価格通りに支払う。労働力の消費過程は、同時に、商品の生産過程であり剰余価値の生産過程である。労働力の消費は、他のどの商品とも同じく、市場すなわち流通部面の外で行われる。それゆえ、われわれも、この二人-貨幣所有者と労働力所有者-とともに生産という秘められた場所に入っていこう。ここでは、どのようにして資本が生産するかということだけでなく、どのようにして資本そのものが生産されるかということもまた、明らかになるだろう。貨殖の秘密がついに暴露されるに違いない。 (21)労働力の売買が行われる流通部面は、実際、天賦人権の真の楽園であった。ここで支配しているのは、自由、平等、所有、およびベンサムだけである。自由―労働力の買い手と売り手はどちらも自由意思によって規定されているだけだから。平等―どちらも商品所有者として関連しあい、等価物と等価物を交換するから。所有―だれもみな、自分のものを自由に処分するだけだから。ベンサム―両当事者も、問題なのは自分のことだけだから。彼らを結びつけて、一つの関係のなかに置く唯一の力は、彼らの自己利益、彼らの特別利得、彼らの私益という力だけである。 (22)この単純流通または商品交換の部面から、俗流自由貿易論者は、資本および賃労働の社会についての見解、概念、および自己の判断の基準を引き出してくるのであるが、この部面を立ち去るにあたって、わが登場人物たちの顔つきは幾分変わっているように見える。さきの貨幣所有者は資本家として先に立ち、労働力所有者は彼の労働者としてそのあとについていく。前者はほくそ笑みながら。後者は自分の皮を売ってしまってもう皮になめされるよりほかにはなんの望みもない人のように、おずおずといやいやながら。
by shihonron
| 2009-12-15 23:30
| 学習会の報告
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