2010年 05月 18日
5月18日(火)に第188回の学習会を行いました。 レジュメに基づいた報告を受け、「第15章 労働力の価格と剰余価値との量的変動」の第4節を検討しました。 以下はレジュメです。 第4節 労働の持続と生産力と強度とが同時に変動する場合 ★「労働の持続」とは「労働日」あるいは「労働時間」のこと。 第1段落・この場合には明らかに多数の組合せが可能である。 ・すべての可能な場合の分析は、第3節までで与えられた解明によって容易である。 ・二つの重要な場合について簡単に注意するだけにしておく。 第2段落・(1)労働の生産力(労働力の価値を規定する労働部門での)が低下して同時に労働日が延長される場合。 第3段落 ケース1 剰余価値の絶対量は減少し、労働力の価値に対する割合も減少 A 12時間労働日 V=6時間(3シリング)・M=6時間(3シリング) M=V ↓ B 12時間労働日 V=8時間(4シリング)・M=4時間(2シリング) M=0.5V ケース2 剰余価値の絶対量は不変だが労働力の価値に対する割合では減少 A 12時間労働日 V=6時間(3シリング)・M=6時間(3シリング) M=V ↓ B 14時間労働日 V=8時間(4シリング)・M=6時間(3シリング) M=0.75V ケース3 剰余価値の絶対量は増加するが労働力の価値に対する割合は不変 A 12時間労働日 V=6時間(3シリング)・M=6時間(3シリング) M=V ↓ B 16時間労働日 V=8時間(4シリング)・M=8時間(4シリング) M=V ケース4 剰余価値の絶対量も労働力の価値に対する割合も増大する A 12時間労働日 V=6時間(3シリング)・M=6時間(3シリング) M=V ↓ B 18時間労働日 V=8時間(4シリング)・M=10時間(5シリング) M=1.25V ・労働の生産力が低下して同時に労働日が延長される場合には、剰余価値の比率的大きさは減少しても その絶対量は変わらないことがありうる。(ケース2) ・また、剰余価値の絶対量は増加してもその比率的な大きさは変わらないこともありうる(ケース3)し、また延長の程度によっては剰余価値が絶対的にも比率的にも増大することもありうる(ケース4)のである。 第4段落 ・1799年から1815年までの期間にイギリスでは生活手段の価格騰貴は、生活手段で表される現実の労賃が下がったのに、名目的な賃金引き上げを伴った。 ・このことから、ウェストやリカードは、農耕労働の生産性の減退が剰余価値率の低下を引き起こしたという結論を引き出し、この彼らの空想のなかでしか妥当しない仮定を、労賃と利潤と地代との相対的な量的関係についての重要な分析の出発点にした。 ・ところが、高められた労働の強度と強制された労働時間の延長とのおかげで、剰余価値は当時は絶対的にも相対的にも増大したのである。 ・この時代こそは、無限度な労働日の延長が市民権を獲得した時代だったのであり、一方では資本の、他方では極貧の、加速度的な増加によって特別に特徴づけられた時代だったのである。 第5段落 ・(2)労働の強度と生産力とが増大して同時に労働日が短縮される場合 第6段落 ・労働の生産力の上昇と労働の強度の増大は両方とも、労働日のうち必要労働時間を短縮する。 ・労働日の絶対的な最小限界は、一般に、労働日のこの必要ではあるが収縮可能な構成部分によって、画される。 ・1労働日全体をそこまで収縮すれば、剰余労働は消滅するであろうが、それは資本の支配体制のもとではありえない。 ・資本主義的生産形態の廃止は、労働日を必要労働だけにかぎることを許す。 ・とはいえ、必要労働は、その他の事情が変わらなければ、その範囲を拡大するであろう。 ・なぜならば、一方では、労働者の生活条件がもっと豊かになり、彼の生活上の諸欲求がもっと大きくなるからである。 ・また、他方では、今日の剰余労働の一部分は必要労働に、すなわち社会的な予備財源と蓄積財源との獲得に必要な労働に、数えられるようになるであろう。 ■フランス語版では《資本主義制度が廃止されれば、剰余労働が消滅し、労働日はそっくりそのまま必要労働に縮小されうるであろう。しかし、忘れてはならないのは、現在の剰余労働部分、準備財源と蓄積財源との形成にあてられる部分が、この場合には必要労働として計算されるということであり、また、必要労働の現在の大きさを制限するものは、雇主の冨を生産するように運命づけられている賃金労働者階級の生計費だけであるということである。》となっている。 第7段落 ・労働の生産力が増進すればするほど労働日は短縮されることができるし、また労働日が短縮されればされるほど労働の強度は増大することができる。 ・社会的に見れば、労働の生産性は労働の節約につれても増大する。 ・この節約には、単に生産手段の節約だけではなく、いっさいの無用な労働時間を省くことが含まれる。 ・ 資本主義的生産様式は、各個の事業では節約を強制するが、この生産様式の無政府的な競争体制は、社会全体の生産手段と労働力との最も無限度な浪費を生みだし、それとともに、今日では欠くことができないにしてもそれ自体としてはよけいな無数の機能を生み出すのである。 第8段落 ・労働の強度と生産力とが与えられていれば、労働のすべての労働能力ある社会成員のあいだに均等に配分されていればいるほど、すなわち、社会の一つの層が労働の自然必然性を自分からはずして別の層に転嫁することができなければできないほど、社会的労働日のうちの物質的生産に必要な部分はますます短くなり、したがって、個人の自由な精神的・社会的活動のために獲得された時間部分はますます大きくなる。 ・労働日の短縮の絶対的限界は、この面から見れば、労働の普遍性である。 ・資本主義社会では、ある一つの階級のための自由な時間が、大衆のすべての生活時間が労働時間に転化されることによって、つくりだされるのである。 ■フランス語版では《この意味では、労働日の短縮はその最後の限界を、手の労働の普遍化のうちに見出す。》となっている。 ★労働可能なすべての人が生産的労働を担うことによって、労働時間の短縮は極限にまで可能となり、自由な時間を個人の才能の開花のために使うことができるということだろう。 ■《言うまでもなく、社会形態が異なれば、必須生活手段と剰余生産物への新生産物の分割のあり方も量的・質的に著しく異なる。とりわけ階級社会では、必須生活手段は剰余生産物に比べて量・質ともに貧弱であらざるをえない。しかし、ここでも階級間の力関係の変化で必須生活手段の内容は変化しうるものであって、固定的なものではけっしてない。かなめは、どんな社会でも、社会の総生産物は労働する諸個人の再生産にはいる部分とそれを超える部分とに分かれるのだというところにある。必須労働と剰余労働との区別は階級社会だけのものだとする一部の論者は、このことの意義と重要性とに気づいていないのである。》(大谷禎之介『図解社会経済学』27ページ 大谷禎之介氏は、通常の訳語では「必要生活手段」「必要労働」とされているものを「必須生活手段」「必須労働」と訳している。) ■《生産手段が社会によって把握されるとともに、商品生産は廃止され、したがってまた生産者にたいする生産物の支配も廃止される。社会的生産の内部の無政府状態にかわって、計画的・意識的な組織が現われる。個体生存競争はなくなる。こうして、はじめて人間は、ある意味では、動物界から最終的に分離し、動物的な生存条件から真に人間的な生存条件にはいりこむ。人間をとりまく生活諸条件の全範囲は、いままで人間を支配してきたが、いまや人間の支配と制御のもとにはいる。人間は、自分自身の社会化の主人となるから、またそうなることによって、はじめて自然の意識的な真実の主人となる。これまでは、人間自身の社会的行為の諸法則は、人間を支配する外的な自然法則として人間に対立してきたが、いまや、人間によって十分な専門知識をもって応用され、したがって人間によって支配されるようになる。人間自身の社会化は、これまでは、自然と歴史とによって無理に押しつけられたものとして人間に対立してきたが、いまや、人間の自由な行為となる。これまで歴史を支配してきた客観的な外的な諸力は、人間自身の制御に服する。このときからはじめて、人間は十分な意識をもって自分の歴史を自分でつくるようになる。このときからはじめて、人間によってはたらかされる社会的な諸原因は、主として、またますます大きくなる度合いで、人間が欲するとおりの結果を生むであろう。これは、必然の国から自由の国への人類の飛躍である。》(国民文庫『空想から科学へ』112-113頁)
by shihonron
| 2010-05-18 23:30
| 学習会の報告
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