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『資本論』を読む会の報告

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2007年 11月 30日

第82回 11月27日  第6章 不変資本と可変資本

11月27日(火)に第82回の学習会を行いました。「第6章 不変資本と可変資本」の第17段落から第23段落までを輪読、検討しました。

●は議論の報告、■は資料、★は報告者によるまとめや意見や問題提起です。

■テキストの内容と議論
第6章 不変資本と可変資本 
    
第17段落
・生産的労働が生産手段を新たな生産物の構成要素に変えることによって、生産手段の価値にはひとつの転生がが起きる。
・それは、消費された肉体から、新しく形作られた肉体に移る。
・しかし、この転生は、いわば、現実の労働の背後で行なわれる。
・労働者は、元の価値を保存することなしには、新たな価値をつけ加えることは、すなわち新たな価値を創造することはできない。
・なぜならば、彼は労働を必ず特定の有用な形態でつけ加えなければならないからであり、そして労働を有用な形態でつけ加えることは、いろいろな生産物を一つの新たな生産物の生産手段とすることによってそれらの価値を生産物に移すことなしには、できないからである。
・だから、価値をつけ加えながら価値を保存するということは、活動している労働力の、生きている労働の、一つの天資なのである。
・そして、この天資は、労働者にとってはなんの費用もかからず、しかも、資本家には現にある資本価値の保存という多大の利益をもたらすのである。
・景気のよいあいだは、資本家は利殖に没頭しきっていて、労働のこの無償の贈り物が目に見えない。
・労働過程のむりやりの中断、すなわち恐慌は、彼にこれを痛切に感じさせる。

★生産手段、つまり労働対象と労働手段のどちらもが「新たな生産物の構成要素」に変えられるとマルクスは述べている。

★「肉体」とは使用価値のことである。労働によって価値の担い手である使用価値の形態は変化するが、価値は保存(移転)される。

■【転生】てんしょう 生まれ変わること。また、生活態度や環境を一変させること。
     てんせい。
【転生】てんせい 生まれ変わること。輪廻(りんね)。てんしょう。

★現実の労働は具体的・有用的労働に他ならない。その労働を、労働力の支出という側面からだけ取り上げるなら抽象的・人間的労働である。抽象的・人間的労働は価値をつけくわえ(形成し)、具体的・有用的労働は価値を保存(移転)する。

■【天資】生まれつきの資質・性質。天稟(てんぴん)。天性。

●「この天資は、労働者にとってはなんの費用もかからず」とはどういうことかが問題になり、二度労働(一度は価値をつけ加えるために、もう一度は価値を保存するために)するのではなく、一度の労働によって価値をつけ加えると同時に価値を保存するということだろうという結論になりました。

■《労働対象に新たな価値をつけ加えることと、生産物のなかに元の価値を保存することとは、労働者が同じ時間には一度しか労働しないのに同じ時間に生みだす二つのまったく違う結果なのだから、このような結果の二面性は明らかにただ彼の労働そのものの二面性だけから説明できるものである。同じ時点に、彼の労働は、一方の属性では価値を創造し、他方の属性では価値を保存または移転しなければならないのである。》(国民文庫347頁・原頁214)

●「労働のこの無償の贈り物」とは何かが問題となり、価値が保存されることだとの結論になりました。

第18段落
・およそ生産手段として消費されるものは、その使用価値であって、これの消費によって労働は生産物を形成するのである。
・生産手段の価値は実際は消費されるのではなく、したがってまた再生産されることもできないのである。
・それは保存されるが、しかし、労働過程で価値そのもの操作が加えられるので保存されるのではなく、価値が最初そのうちに存在していた使用価値が消失はするがしかしただ別の使用価値となってのみ消失するので保存されるのである。
・そけゆえ、生産手段の価値は、生産物のうちに再現はするが、しかし、正確に言えば、再生産されるのではない。
・生産されるものは、元の交換価値がそのうちに再現する新たな使用価値である。

■【再生産】商品の生産と流通・消費の過程が不断に繰り返されること。また、その過程。

●「なぜここで価値ではなく交換価値という言葉が用いられているのか」との疑問が出されましたが、「意味としては価値のことであり、差異はないだろう」との発言がありました。

第19段落
・労働過程の主体的な要因、活動しつつある労働力の方は、そうではない。
・労働がその合目的的な形態によって生産手段の価値を生産物に移して保存するあいだに、その運動の各瞬間は追加価値を、新価値を形成する。
・かりに、労働者が自分の労働力の等価を生産した点、たとえば6時間の労働によって3シリングの価値をつけ加えた点で、生産過程が中断するとしよう。
・この価値は、生産物価値のうちの、生産手段からきた成分を越える超過分をなしている。
・それは、この過程のなかで発生した唯一の本源的な価値であり、生産物価値のうちでこの過程そのものによって生産された唯一の部分である。
・もちろん、それは、ただ、資本家によって労働力の買い入れのときに前貸しされ労働者自身によって生活手段に支出された貨幣を補填するだけである。
・支出された3シリングとの関係からみれば、3シリングという新価値はただ再生産として現われるだけである。
・しかし、それは現実に再生産されているのであって、生産手段の価値のようにただ外見上再生産されているだけではない。
・ある価値の他の価値による補填は、ここでは新たな価値創造によって媒介されているのである。

★ ある価値=資本家によって労働力の買い入れのときに前貸しされ労働者自身によって生活手段に支出された貨幣 
 
  他の価値=6時間の労働によってつけ加えられた価値

第20段落
・しかし、われわれがすでに知っているように、労働過程は、労働力の価値の単なる等価が再生産されて労働対象につけ加えられる点を越えて、なお続行される。
・この点までは6時間で十分でも、それではすまないで、過程はたとえば12時間続く。
・だから、労働力の活動によってはただそれ自身の価値が再生産されるだけではなく、ある超過価値が生産される。
・この剰余価値は、生産物価値のうちの、消費された生産物形成者すなわち生産手段と労働力との価値を超える超過分をなしているのである。

■《それゆえ、この過程の完全な形態は、G―W―G’であって、ここでは G’=G+ΔG である。すなわちG’は、最初に前貸しされた貨幣額・プラス・ある増加分に等しい。この増加分、または最初の価値を超える超過分を、私は剰余価値(surplus value)と呼ぶ。それゆえ、最初に前貸しされた価値は、流通のなかでただ自分を保存するだけではなく、そのなかで自分の価値量を変え、剰余価値をつけ加えるのであり、言い換えれば自分を価値増殖するのである。・そしてこの運動がこの価値を資本に転化させるのである。》
(国民文庫263-264頁・原頁165)

★ここでは生産物形成者として、生産手段と労働力をあげている。

第21段落・われわれは、生産物価値の形成において労働過程のいろいろな要因が演ずるいろいろに違った役割を示すことによって、事実上、資本自身の価値増殖過程で資本のいろいろな成分が果たす機能を特徴づけたのである。
・生産物の総価値のうちの、この生産物を形成する諸要素の価値総額を超える超過分は、最初に前貸しされた資本価値を越える価値増殖された資本の超過分である。
・一方の生産手段、他方の労働力は、ただ、最初の資本価値がその貨幣形態を脱ぎ捨てて労働過程の諸要因に転化したときにとった別々の存在形態でしかないのである。

★《労働過程のいろいろな要因》とは、生産手段(労働手段と労働対象)および労働力である。労働過程の諸契機としては、労働そのもの、労働対象、労働手段があげられていたが、労働は《活動しつつある労働力》に他ならず、労働力は《労働過程の諸要因》の一つ(労働過程の主体的な要因)なのである。

第22段落
・要するに、生産手段すなわち原料や補助材料や労働手段に転換される資本部分は、生産過程でその価値量を変えないのである。
・それゆえ、私はこれを不変資本部分、または、もっと簡単には、不変資本と呼ぶことにする。

★不変資本=生産手段に転換される資本部分

第23段落
・これに反して、労働力に転換された資本部分は、生産過程でその価値を変える。
・それはそれ自身の等価と、これを越える超過分、すなわち剰余価値とを再生産し、この剰余価値はまたそれ自身変動しうるものであって、より大きいこともより小さいこともありうる。
・資本のこの部分は、一つの不変量から絶えず一つの可変量に転化していく。
・それゆえ、私はこれを可変資本部分、またはもっと簡単には、可変資本と呼ぶことにする。
・労働過程の立場からは客体的な要因と主体的な要因として、生産手段と労働力として、区別されるその同じ資本部分が、価値増殖過程の立場からは不変資本と可変資本として区別されるのである。

★可変資本=労働力に転換された資本部分

■《労働過程の単純な諸契機は、合目的的な活動または労働そのものとその対象とその手段である。》(国民文庫313頁・原頁193)
■《この全過程をその結果である生産物の立場から見れば、二つのもの、労働手段と労働対象とは生産手段として現われ、労働そのものは生産的労働として現われる。》(国民文庫317頁・原頁196)



by shihonron | 2007-11-30 09:15 | 学習会の報告


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