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『資本論』を読む会の報告

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2008年 06月 02日

第13章 第3節 のレジュメ その1

第3節 機械経営が労働者に及ぼす直接的影響                     s.416
① 労働手段の革命=大工業の出発点
 労働手段の最も発達した姿⇒工場の編成された機械体系
 この客観的な有機体に人間材料がどのようにして合体されるかを見る前に,かの革命が労働者そのものに及ぼすいくつかの一般的な反作用を考察してみよう。

a 資本による補助労働力の取得-----婦人・児童労働
労働者家族の全員を資本の直接的支配のもとに編入
① 機械が筋力をなくてもよいものにするかぎりでは,機械は,筋力のない労働者,または身体の発達は未熟だが手足の柔軟性が比較的大きい労働者を充用するための手段になる。それだからこそ,婦人・児童労働は機械の資本主義的充用の最初の言葉だったのだ! こうして,労働と労働者とのこのたいした代用物は,たちまち,性の差別も年齢の差別もなしに労働者家族の全員を資本の直接的支配のもとに編入することによって賃金労働者の数をふやすための手段になったのである。資本家のための強制労働は,子どもの遊びにとって代わっただけでなく,家庭内で慣習的な限界のなかで家族自身のために行なわれる自由な労働にもとって代わったのである。

成年男子労働力の減価
② 労働力の価値は,個々の成年労働者の生活維持に必要な労働時間によって規定されていただけではなく,労働者家族の生活維持に必要な労働時間によって規定もされていた。機械は,労働者家族の全員を労働市場に投ずることによって,成年男子の労働力の価値を彼の全家族のあいだに分割する。それだから,機械は彼の労働力を減価させるのである。今では,一つの家族が生きるためには,4人がただ労働を提供するだけではなく,資本のための剰余労働をも提供しなければならない。こうして,機械は,はじめから,人間的搾取材料,つまり資本の最も固有な搾取領域を拡張すると同時に(121),搾取度をも拡張するのである。
(121) 家族の機能の或るもの,たとえば子どもの世話や授乳など資本に押収された家庭の母は,多かれ少なかれ代理人を雇わなければならない。家族の消費のために必要な労働,たとえば裁縫や修理などは,既製品の買い入れによって補わなければならない。だから,家庭労働の支出の減少には,貨幣支出の増加が対応するのである。したがって,労働者家族の生産費は増大し,それが収入の増加分を相殺してしまうのである。

労働者は今では妻子を売る。彼は奴隷商人になる                       s.418
③ 商品交換の基礎の上では,資本家と労働者とが,自由な人として,独立な商品所持者として,一方は貨幣と生産手段との所持者,他方は労働力の所持者として,相対するということが,第一の前提だった。ところが,今では資本は未成年者または半成年者を買う。以前は,労働者は彼自身の労働力を売った-----。彼は今では妻子を売る。彼は奴隷商人になる(122)。子どもの労働にたいする需要----- 「地方新聞に出た一つの広告----。12人から20人まで少年を求める。年齢は13歳として通用するより若くないもの。賃金は1週4シリング。」
④ 工場主の使用する13歳末満の子どもの数がしばしば飛躍的に減少していること-----大部分は証明医のしわざだったのであって,彼らは資本家の搾取欲や親の小商人的要求に応じて子どもの年齢をずらせたのである。-----今でも大ブリテンでは少なくとも2000人の少年が生きている煙突掃除機として(彼らに代わる機械があるのに)彼ら自身の親たちによって売られるのである。機械によって労働力の買い手と売り手との法律関係に革命がひき起こされ,そのために全取引が自由な人と人とのあいだの契約という外観さえ失ってしまうのである-----。
(122) イギリスの工場における婦人・児童労働の制限が成年男子労働者の手で資本からかち取られたという偉大な事実とは対照的に,「児童労働調査委員会」の最近の報告書のなかでも,まだ,子どもの売買について親の労働者たちが示すほんとうに腹だたしい,まったく奴隷商人的な気質が見いだされる。
労働者児童の異常に高い死亡率
⑤ 機械が,最初はその基礎の上に成長する工場で直接に,次にはそのほかのすべての産業部門で間接に,資本の搾取のもとに置く児童や少年やそしてまた労働婦人の肉体的退廃には,前にも言及した。ここでは,幼少期における労働者児童の異常に高い死亡率について述べておこう。-----1861年の政府の医事調査----この高い死亡率の原因は,特に母親の家庭外就業,それに起因する子どもの放任と虐待,ことに不適当な食物,食物の不足,阿片剤を飲ませることなどであり,そのうえに,自分の子どもにたいする母親の不自然な疎隔。その結果としてわざと食物をあてがわなかったり有毒物を与えたりすることが加わる。「婦人の就業が最も少ない」農業地区では「これに反して死亡率は最も低い」のである。----ところが,1861年の調査委員会は予想外の結果を明らかにした。すなわち,北海沿岸のいくつかの純農耕地区では,1歳末満の子どもの死亡率が,最も悪評の高い工場地区のそれにほとんど匹敵する,というのである。「冬は湿地で夏はやせた草地だった土地を肥沃な穀作地に変えたということが,乳児の異常な死亡率を生みだしたということ」だった。
⑥ 土地耕作の革命にともなって工業制度が採り入れられたのである。
「少年少女といっしょに隊をつくって作業する既婚婦人たちは,『親方 Gangmeister』と称して隊全体を雇っている一人の男によって,一定の金額で農業者の使用に任される。これらの隊は----習慣的な不品行のためにすさんでおり,----家で衰弱している自分の子どもに与える有害な結果には少しもとんちゃくしない。」
⑦ ここでは工場地区のすべての現象が再生産されるのであり,しかも,隠蔽された幼児殺しや子どもに阿片を与えることはいっそう大きく再生産されるのである(133)。
(133) イギリスの工場地区でそうであるように,農業地区でも男女の成年労働者のあいだでの阿片消費は日ごとに広がって行く。「阿片剤の販売を助長することは……卸売商人の大きな目的である。薬屋はそれを主要な人気商品だと思っている。」阿片剤を飲まされた乳児は,「しわがよって小さな老人のようになったり,しなびて小猿のようになったりした。」インドと中国がイギリスにたいしていかに復讐しているかが見られる。

人為的に生みだす知的荒廃-----児童教育の実態                     s.421
⑧ 婦人・児童労働の資本主義的搾取から生ずる精神的萎縮は,-----『イギリスにおける労働者階級の状態』。しかし,未成熟な人間を単なる剰余価値製造機にしてしまうことによって人為的に生みだされた知的荒廃,-----このような知的荒廃は,ついに,イギリスの議会にさえも,工場法の適用を受けるすべての産業で初等教育を14歳未満の児童の「生産的」消費の法定条件にするということを強要したのである。資本主義的生産の精神は,工場法のいわゆる教育条項の粗漏な書き方からも,行政機構の欠陥のためにこの義務教育が大部分は再び幻想的になるということからも,この教育法にたいする工場主たちの反対そのものからも,そしてこの法律を回避するために彼らが実行した奸計術策からも,はっきりと見え透いていた。
「立法府は,----ごまかしの法律を制定したのだからである。それが規定しているのは,子どもたちは毎日一定の時間」(3時間)「学校と称する場所の四壁内に閉じ込められるべきだということ,そして,児童使用者はこれに関して毎週学校教師または学校女教師として署名する人物から証明書をもらわなければならないということ」(レナード・ホーナー)
⑨ 1844年の改正工場法が制定されるまでは,学校教師または女教師によって十字形で署名された通学証明書が珍しくなかった。というのは,教師自身も字が書けなかったからである。
「私は,教師の無知に驚くのあまり,彼に向かって言った,『失礼ながら,あなたは字が読めるのか?』と。彼は答えた,『ええ,まあ多少は』と。弁解して彼はつけ加えた,『とにかく,私は生徒たちの前に立っているのだ』と。」
⑩ -----1844年以後は「通学証明書の数字は教師の手で書き込まれていなければならず,同じく教師の姓名も彼自身の手で書かれていなければならない」(レナード・ホーナー)。
⑪ 「----筆跡を見ても彼女に教授能力がないということは疑う余地がなかった。彼女自身も自分が記帳できないということを認めていた。-----第2の学校では私は奥行15フィートで間口10フィートの教室を見た。これだけの空間のなかに75人の子どもが数えられ----。」「有能な教師のいる学校はあっても,その多くでは,3歳から上のあらゆる年齢の子どもで混雑をきわめ,そのために教師の努力もほとんどむだ----。彼の暮らしは,----ただ一室に詰め込めるだけの数の子どもたちから受け取る小銭の数だけに依存している。----このような児童が政府の統計では教育された(educated)ものとして現われるのである。」
⑫ スコットランドでは工場主たちは通学義務のある子どもをできるだけ排除しようとする。
「教育条項にたいする工場主たちの激しい嫌悪を証明するには,これだけで十分である。」
⑬ 特別の工場法によって規制されている更紗《さらさ》やその他の捺染業----法律の規定によれば,
「どの子どもも,この種の捺染業で使用される前に,その就業第一日の直前の6か月のあいだに少なくとも30日,そして150時間よりも少なくない時間通学していなけれはならない。捺染業で働いているあいだも,やはり6か月という期間ごとに30日間にわたり150時間は通学しなければならない。-----30日が過ぎて,150時間という法定の総時間数に達すれば,----捺染工場に帰って,次の通学期がくるまで再び6か月間そこにとどまり,その次にはまた,再び通学簿が仕上がるまで学校にいる。-----6か月間の捺染工場滞在から帰ってくると,----もちろん,彼らはその前の通学によって得たことは再びすっかり忘れてしまっている。また別の更紗捺染工場では,-----たとえば,ある日は午前8時から11時まで,また別のある日は午後1時から4時まで学校にきていて,-----たまたま雇い主が子どもを必要としない何日かのはんぱな日に,何時間かの余りの時間だけ帰ってくる。こうして,子どもは,150時間がなしくずしにすまされるまで,学校から工場へ,工場から学校へと,いわばこづきまわされる(141)。」(141)工場法の適用を受けていない諸産業では,かのガラス工場主J・ゲディスの見解がまだ非常に優勢である。-----「私の目のとどくかぎりでは,この数年来労働者階級の一部が享受してきた多量に過ぎる教育は有害なものである。それは危険だ,というのは,それは彼らをあまりにも独立させてしまうからである。」

労働者の反抗を打ちひしぐ
⑭ 結合された労働人員に圧倒的な数の子どもや女を加えることによって,機械は,マニュファクチュアではまだ男子労働者が資本の専制にたいして行なっていた反抗を,ついに打ちひしぐのである(142)。
(142) 「工場主----は自分の力織機には女だけを使っている。彼が歓迎するのは,既婚の女,ことに家庭に扶養家族をもっている女たちである。彼女たちは,未婚の女よりもずっと注意深くて,物を教えやすく,必要な生活の資をかせぐために全力を尽くすことをしいられている。こうして,美徳が,女性に特有な美徳が,女性にとっての災いに転倒され,-----こうして,彼女たちの天性にそなわるいっさいの徳性や温柔さが彼女たちの隷属や苦悩の手段にされるのである。」(『十時間工場法案。3月15日のロード・アシュリの演説』)

b 労働日の延長                                  s.425
機械-----労働日延長のための最も強力な手段
① 機械は,労働の生産性を高くするための,すなわち商品の生産に必要な労働時間を短縮するための,最も強力な手段だとすれば,機械は,資本の担い手としては,最初はまず機械が直接にとらえた産業で労働日をどんな自然的限界をも越えて延長するための最も強力な手段になる。機械は,一方では,資本が自分のこのような不断の傾向を赴くままにさせることを可能にする新たな諸条件をつくりだし,他方では,他人の労働にたいする資本の渇望をいっそう激しくする新たな動機をつくりだすのである。

機械⇒産業的な無窮運動機構-----人間的自然的制限を最小の抵抗に抑圧
② 機械では労働手段の運動と働きとが労働者にたいして独立化されている。労働手段は,それ自体として,一つの産業的な恒久運動機構となり,この機構は,もしもそれが自分の人間的補助者のなかのある種の自然的制限すなわち彼らの肉体的弱点や彼らのわがままに衝突しないならは,不断に生産を続けるはずのものである。だから,それは,資本としては-----反抗的ではあるが弾力的な人間的の然的制限を最小の抵抗に抑えつけようとする衝動によって,活気づけられているのである。そうでなくても,この抵抗は,機械による労働の外観上の容易さと,より従順な婦人・児童要素とによって,減らされているのである。
機械の生産性と労働日の長さ
③ 機械の生産性は,すでに見たように,機械から製品に移される価値成分の大きさに反比例する。機械が機能している期間が長ければ長いほど,機械からつけ加えられる価値はそれだけ大きい生産物量の上に分けられることになり,機械が個々の商品につけ加える価値部分はそれだけ小さくなる。ところが,機械の活動的な生存期間は,明らかに,労働日の長さすなわち1日の労働過程の継続時間にこの労働過程が繰り返される日数を掛けたものによって規定されている。

機械の摩損〔損耗,摩滅〕
④ 機械の摩損は,けっしてその利用時間に精確に数学的に対応するものではない。また,このように対応するものと前提しても,7年半のあいだ毎日16時間ずつ使われる機械は,15年のあいだ毎日8時間ずつしか使われない同じ機械と比べて,これと同じ大きさの生産期間を包括するのであって,これよりも多くの価値を総生産物につけ加えるのではない。しかし,前のほうの場合には機械の価値はあとのほうの場合の2倍の速さで再生産されるであろうし,また,この機械によって資本家は7年半のあいだに,別の場合には15年間で飲み込むのと同じ量の剰余労働を飲み込むであろう。
機械の物質的な摩損は二重である
⑤ 機械の物質的な摩損は二重である。一方は,個々の貨幣が流通によって摩損するように,機械の使用から生じ,他方は,使われない剣が鞘のなかで錆びるように,その非使用から生ずる。これは自然力による機械の消耗である。第一の種類の摩損は多かれ少なかれ機械の使用に正比例し,あとのほうの摩損はある程度まで機械の使用に反比例する。

無形の〔社会的〕摩損 moralischen Verschleiß -----労働日延長への特別な動機        s.426
⑥ 物質的な摩損のほかに,機械はいわば無形の〔非物質的,道徳的,通念の上での,社会的基準上の〕摩損の危険にもさらされている。同じ構造の機械がもっと安く再生産されうるようになるとか,この機械と並んでもっと優秀な機械が競争者として現われるようになるとかすれは,それに応じて機械は交換価値を失ってゆく。どちらの場合にも,たとえ機械そのものはまだ若くて生活力をもっていようとも,その価値は,-----それ自身の再生産かまたはもっと優秀な機械の再生産に必要な労働時間によって規定されている。したがって,それは多かれ少なかれ減価している。機械の総価値が再生産される期間が短ければ短いほど,無形の摩損の危険は小さくなり,そして,労働日が長ければ長いほど,かの期間は短い。ある生産部門ではじめて機械が採用されるという場合には,その機械をもっと安く再生産するための新しい方法やいろいろな改良が次々に現われて,それは個々の部分や装置だけではなく機械の全構造に及ぶ。それだから,機械の生涯の最初の時期には労働日延長へのこの特別な動機が最も急激に作用するのである。

労働日の延長⇒機械や建物に投ぜられる不変資本は不変
⑦ 2倍の労働者数を搾取するためには,機械や建物に投ぜられる不変資本部分も原料や補助材料などに投ぜられる不変資本部分も2倍にする必要がある。労働日を延長すれば,生産規模は拡大されるが,機械や建物に投ぜられる資本部分は不変のままである。⇒剰余価値が増大するだけではなく,その搾取のために必要な支出が減少することになる。このことは,ほかの場合でも労働日が延長されればつねに多かれ少なかれ起きることではあるが,この場合にはいっそう決定的に重要である。というのは,ここでは労働手段に転化される資本部分が一般にいっそう大きな比重をもつからである。すなわち,機械経営の発展は,資本のうちの絶えず増大する一成分を,資本が一方では絶えず価値増殖を続けうると同時に他方では生きている労働との接触を中断されればたちまち使用価値も交換価値も失ってしまうような形態に,拘束するのである。「もしわれわれの使用人」(工場労働者)「の一人が工場を去るならば,彼は100,000ポンド・スターリングもかかった資本をむだにすることになる。」(シーニア)
⑧ 考えてもみよ! 100,000ポンドもかかった資本をただの一瞬間でも「むだ」にするとは! ----機械の規模が大きくなるということは,----労働日がますます延長されてゆくことを「望ましい」ものにする。

⑨ 新機械の採用⇒相対的剰余価値の生産(特別剰余価値)-----労働日延長の動機
機械が相対的剰余価値を生産するというのは,ただ,機械が労働力を直接に減価させ,また労働力の再生産に加わる諸商品を安くして労働力を間接に安くするからだけではなく,機械が最初にまばらに採用されるときには機械所有者の使用する労働を何乗もされた労働に転化させ,機械の生産物の社会的価値をその個別的価値よりも高くし,こうして資本家が1日の生産物のより小さい価値部分で労働力の日価値を補填することができるようにするからでもある。それゆえ,機械経営がまだ1種の独占となっているこの過渡期のあいだは,利得は異常に大きなものであって,資本家はこの「初恋の時代」をできるかぎりの労働日の延長によって徹底的に利用しようとするのである。利得の大きいことは,より以上の利得への熱望をそそるのである。



by shihonron | 2008-06-02 13:00 | レジュメ


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